メッセージ

―朝米首脳「板門店」会談の衝撃-東北アジア新時代を開く闘いは、トランプ式「自国第一主義」との闘いに・・・

2019年7月5日 かりの会ピョンヤン

「軍事境界線を越えて朝米首脳が握手」! 電撃的とも言える六月三十日の板門店での朝米首脳会談は全世界を驚かせた。私たちも驚いたが、すでに伏線はあった。この直前に金正恩委員長への「トランプ親書」公表があり、これに「(トランプの)政治的判断力と並々ならぬ勇気に謝意を表する」と委員長が肯定的評価を与えた。今回、軍事境界線を越えて「北朝鮮」に足を踏み入れた史上初の米大統領としてトランプの行動を「並々ならぬ勇断」と金正恩委員長は同じ言葉で讃えた。親書などですでに示唆があったのかもしれない。

「軍事境界線を越えて朝米首脳が握手」を事実上の「戦争終結宣言」だと評する声もある。私たちも「軍事境界線を無意味化する=戦争状態終結」意思を表した出来事だと思う。

日本のマスコミ報道は「まだ何も決まっていない、ただの政治ショーだ」と半信半疑だが、この欄で述べ続けて来たように私たちは事態を楽観している。

南北朝鮮の民意が起こした東北アジアの地殻変動を誰も止めることはできず、「戦争もできず制裁も効果がない」以上、「朝米敵対から和解へ」以外の選択肢が米国にはないと思うからだ。今後の朝米対話の速度と深度は、朝鮮に一方的な非核化を強いるハノイ式の「古い計算方法」ではなく、双方納得のいく「新しい計算方法」に基づく代案を米国が提示できるか否かにかかっている。

古い国際秩序の破壊者としての役割を託され米大統領に就任したトランプにとって、「古い計算方法」=朝鮮の一方的非核化自体への固執はないだろう。今回の板門店での「軍事境界線を無意味化する」トランプの行動は、東北アジアの古い国際秩序を破壊し、新しい米覇権秩序樹立を画策するための第一歩でもある。

他方、南北朝鮮、そしてアジアの民意が目指すのは、古来、地政学的に大国の覇権争奪の草刈り場であった朝鮮半島、東北アジアに脱覇権自主の新時代を開くことだ。

「東北アジアの古い国際秩序の崩壊」を前提とした「新しい秩序づくり」をめぐる覇権勢力(米国)と脱覇権自主勢力(南北朝鮮の民意など)の間の闘いは新たな段階に入った。このように見れば、今起きている事態を正しく見、またこれに正しく対処できると思う。

「米中新冷戦の時代」を前面に掲げ始めたトランプの米国は、東北アジアで起きつつある地殻変動を米国主導の対中覇権抗争に変えることで、アメリカ・ファーストの新しい覇権秩序樹立を画策している。

最近、トランプが「日米安保破棄の可能性」を声高に主張し始めた。「日本が攻撃されれば米国は第三次世界大戦を戦う。・・・でも我々が攻撃されても日本は我々を助ける必要はない。彼らができることは攻撃をテレビで見ることだ」という言説流布、また自ら作り出した「イラン危機」に当たっての「日本のタンカーは日本が守れ」発言も根は同じだ。大阪G20記者会見では、「破棄ではなく日米安保の改訂」だと公言した。安保の双務化、米国を守る戦争に日本が参加できる日米安保に改訂すべきだということだ。

「自分は自分で守れ」「日米同盟をやるなら攻守同盟だ=

 

好機を「待つ」のではなく「引き寄せる」、より積極的な闘いを!

2019年5月5日 かりの会ピョンヤン 若林盛亮

昨年六月のシンガポールでの朝米首脳会談以降、朝米敵対関係解消気運が一挙に高まり、私たちは「好機到来」、「よど号問題見直し」帰国実現の時が来たと、この欄で訴え続けてきた。ところがハノイでの朝米首脳会談におけるトランプの「ちゃぶ台返し」でその目算に狂いが生じている。

「・・・すぐる二月ハノイで行われた第二回朝米首脳会談は、われわれが戦略的決断と大勇断を下し踏み出した歩みが果たして正しかったのかについて強い疑問を引き起こしており、米国が真心から朝米関係を改善しようという意欲があるのどうかについて警戒心を持たせた契機となりました」

これがすぐる四月十二日、最高人民会議(国会)で金正恩国務委員長が行った施政演説にあるハノイ会談に対する朝鮮側の認識だ。演説の結語では、「敵対勢力の制裁解除問題ごときには今後は執着しないであろう」とまで言い切られている。これは制裁を武器に一方的な「非核化要求」で「先武装解除・後体制転覆」を狙うといったハノイ方式の朝米会談には二度と応じないということだ。

これにより朝米関係改善を軸に朝鮮半島、東北アジアに新時代を開こうという気運に暗雲がさしたことだけは事実であろう。だが、だからといって朝鮮半島、東北アジアに生まれた新時代開拓の流れ自体が滞るわけではない。ハノイでのトランプの「ちゃぶ台返し」は、この流れに乗じてすでに破綻した東北アジアでの覇権を繕おうとした米国の企図が中途挫折、再検討を余儀なくされる一方、かと言ってこの流れにストップをかけることもできず右往左往して醜態をさらす覇権帝国、米国の弱さを世界の目に余すところなく露呈させたものだ。

今回の事態は、ある意味で闘いを新たな段階に押し上げる契機となったとも言える。米国の覇権野望を根底から挫くことが、新時代への流れを加速させることを当事者に教えたのではないだろうか。

東北アジアを戦争と敵対の不毛地帯から、平和と友好、協力、繁栄の新地帯に転換させる闘いは、元来、一昨年二月のピョンチャン五輪の共同祭典化から始まったこの地域の主人たち、南北朝鮮主導のものだ。

すでに南北朝鮮の主体的努力によって軍事境界線一帯の非武装化が進展し韓国側では一帯の観光地帯化構想までが練られており、南北朝鮮間では実質的に「戦争終結状態」に限りなく近づいている。あとは米国に「終戦宣言」「平和協定締結」を迫るだけだ。

朝鮮の社会主義強国建設も当初から米国の制裁を前提に行われてきたし、「制裁解除」があればよしなければそれでよしというものだ。

先の施政演説には、「長期間の核威嚇を核で終息させたように、敵対勢力の制裁突風は自立、自力の熱風で一掃すべき」とあるが、米国の核威嚇を無力化したいまは、覇権の最後のカード、制裁威嚇をも無力化するものとして従来からの自力更生により積極的な意義付けを与えたものだと思う。

最近、大聖(テソン)という百貨店がリニューアル・オープンしたが、一階のスーパーマーケットの食料品は朝鮮各社の国産品で占められ品質も中国製品に遜色のないものだ。制裁下で景気は活況を呈している。百聞は一見に如かず、山中訪朝団がその眼で見ることになるだろう。

今回の朝ロ首脳会談を終えたプーチン大統領は「世界情勢は強いものが勝ちという論理ではなく、国際法重視に戻さなければならない」と述べた。東北アジアにおいて、米国式の「制裁威嚇」など覇権的、強権的な支配から脱し、各国の主権、各民族の自主権尊重の新しい国際秩序を作り出すという南北朝鮮の闘いに、プーチン自身も積極的に入っていくという意思表示であろうと思われる。

米国がどうあろうと東北アジアは新時代に向けた動きをより活発化させるだろう。私たちの「よど号問題見直し」帰国も朝米関係好転という好機到来を「待つ」段階から、好機を「引き寄せる」闘いに転換する時が来たように思う。それについて次回山中訪朝団と協議していきたいと思う。

 

四九年前に始まった「よど号」の対米対決戦、その最終決着の時

2019年4月5日 かりの会ピョンヤン 若林盛亮

 三月三一日はよど号が羽田を飛び発った日、今年で四九年目になる。ピョンヤンに到着したのが四月三日だが、四日もかかったのは、ソウルで三泊四日留め置かれたからだ。

 玄界灘を越え朝鮮半島に入った瞬間から、よど号は対米対決戦の渦中に否が応でも巻き込まれることになった。「北朝鮮に行かせてはならない」という米軍の強硬姿勢は、よど号機内にCIA要員がいたから(米国人が乗客にいた)だとか言われるが真相はわからない。だが要するによど号が金浦に強制着陸させられた理由は、朝鮮と米国が戦争状態にあるからであり、ソウルでの四日間の厳しい攻防はその緊張関係を肌で痛感させられた事件だった。

 いま「よど号問題見直し」帰国の闘いの基本環である「よど号欧州拉致逮捕状」撤回の闘いも、朝米の戦争状態持続からくる米国の対朝鮮敵視政策と直接、連関する闘いだ。「よど号問題」についてはこの欄で何度も述べてきたので詳述は避けるが以下、概略を記す。

 一九八八年に米国が朝鮮を「テロ支援国家」に指定、その根拠に「よど号ハイジャック犯を匿っている」ことをあげ、その後「ソウル五輪テロ」(八八年)、「タイ偽ドル工作」(九六年)、そして「欧州留学生拉致」と幾多の「北朝鮮支配下の“よど号”テロ工作」事件をでっちあげ、「よど号犯を追放せよ」と長年にわたり朝鮮に制裁圧力をかけ続けてきた。そのような朝鮮敵視政策の産物、それがよど号問題だ。「よど号問題見直し」帰国の闘いは事の本質上、われわれの対米対決戦でもある。

 朝鮮に対する米国の「テロ支援国家指定」は「よど号とは関係なく」解除されて久しい(二〇〇八年解除)。だが米国の対朝鮮敵視政策追随の結果、「結婚目的誘拐(拉致)罪」で逮捕状まで出させられた日本政府が引っ込みがつかなくなった形でこの「拉致逮捕状」撤回の闘いが未解決の課題として残された。いまその闘いが決着の時を迎えている。

 昨年来の朝鮮半島の地殻変動は、覇権時代の終焉という大きな時代の流れの中にあって、朝米間の戦争状態と米国によって強いられた分断と敵対の民族的悲劇を終わらせ、和解と協力、統一と共存共栄を闘い取るための南北朝鮮の民意によって引き起こされたものだ。米合衆国大統領トランプが朝米首脳会談の場に出てきたことは、米国の長年にわたる朝鮮半島支配と対朝鮮敵視政策の破綻と敗北を世界に示したものだ。

 「合意なし」で終わったハノイ会談で見せた米国の唐突な「ちゃぶ台返し」は、米国の強さではなく弱さの表現と見るべきだろう。「北朝鮮の完全な非核化なしには制裁解除はない」というオール・オア・ナッシングの挙に出たことは、米国の豹変ぶりを世界に示すものだ。

 昨年六月のシンガポールでの朝米首脳会談での共同宣言で合意された非核化とは「北朝鮮のみの非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」であり、それは「(非核化と制裁解除を)段階的に進める」すなわち「行動対行動」原則で行われるものだったはず。首脳間で交わした「共同宣言」すら「ちゃぶ台返し」をする米国を世界がどう見るかは明白だ。ゴラン高原のイスラエル占領を不法としこれをシリア領と認めた国連決議を破り、ゴラン高原をイスラエル領と宣言した米国に、「北朝鮮に対する国連制裁決議履行」を世界に迫る資格も権利もないことは世界も認識したはずだ。

 今後、朝鮮がどのように出てくるかは不明だが、米国による朝鮮半島支配と対朝鮮敵視政策の破綻と敗北は免れようがないものであることは間違いないことだ。

 われわれの「よど号問題見直し」帰国の闘い、「よど号」の対米対決戦の最終決着の時に来ていることも間違いないことだ。問題はそれをいかに早めるか否かだと思う。

 

3・1蜂起百周年を迎えて

2019年2月5日 かりの会ピョンヤン 小西隆裕

来る3月1日は、あの「3・1蜂起」百周年に当たる日だ。

100年前のあの日、日帝の10年に渡る過酷な植民地統治に反対し、「独立万歳」を叫ぶ朝鮮全国、数万、数十万の一大示威闘争が起こり、一,二か月に及んだ。だが、そこで流された無数の血の代価が払われることはなかった。

その後、26年続いた植民地時代、第二次大戦後、74年に渡る南北分断時代、そして今、その分断された隣国、韓国、朝鮮とわが国との関係は、悪化するだけ悪化し、今や最悪になっている。これまでの対朝鮮関係に加え、対韓国の関係までがそうなっている。

かつて様々な問題が生じながら、その多くが政治決着に持ち込まれ、朴槿恵政権では、慰安婦問題で訴訟の先送りが図られるなど、その関係悪化が回避されてきた日韓関係が、今、徴用工問題やレーダー照射問題など、逆に、関係の悪化が図られているのでは?と見られるまでになっている。

なぜそうなっているのか。その原因については、いろいろ言われている。文在寅政権が「ポピュリズム(人気取り)をやっている」「『北』に動かされている」、等々。

ここで想起すべきは、文在寅政権がどのようにして生まれた政権かということだ。「ろうそく革命」、この政権の誕生は、あの事変を離れてはあり得ない。あの時、「ともに民主党」など野党が韓国民を動かしたのではない、逆に、韓国民の方が諸政党を動かしたと言われた。

今、世界的範囲で広く見られるこの国民と政党の関係は、文在寅政権樹立後も変わっていないのではないか。すなわち、韓国民の民意が文在寅政権を動かして、元徴用工の人たちへの日本企業による損害賠償問題などを引き起こしているのではないかということだ。

その上にもう一つ想起すべきことがあると思う。それは、文在寅政権が、今、「北」と協同で、戦争と敵対から平和と繁栄、統一の時代へ、朝鮮半島の転換を図っているという事実だ。古い時代から新しい時代への転換、この南北朝鮮の民意共通の要求、時代転換の要求が文在寅政権の問題提起には反映されているのではないだろうか。

こうして見ると見えてくるものがある。それは、今日の最悪の日韓関係が南北朝鮮の民意の共通した要求を反映した、すぐれて時代的な民意の産物だということだ。

今日、日本において、この悪化するだけ悪化した最悪の日韓関係に対して、主として韓国側に責任を求める考え方が一般的なようだ。

それは、よく言われるように、徴用工の問題など植民地時代の諸問題は、すべて1965年の日韓基本条約とその付随協定の一つ、請求権協定によって解決済みだ。それを無視して損害賠償問題などを蒸し返すのは、国際法の大原則に反する非常識極まりない無法行為だ。ということだ。

ところで、われわれ日本人には、ここで知らなければならないことがあると思う。それは、この日韓基本条約や請求権協定で、日本側が、過去の植民地支配を国際法に基づき合法的に行われたものだという従来の認識に基づいて、その総括も謝罪も行っていないという事実であり、そのため、この条約を米国から促されるまま、唯々諾々と締結した朴正煕政権に対する韓国民の広範な反対闘争が激しく展開されたという事実だ。

一言で言って、韓国民の民意は、この条約も協定も認めておらず、文在寅政権は、その民意に無言の理解を示し、それに従ったと言うことができるのではないだろうか。

今、時代は、帝国主義・覇権の崩壊とともに、民意によって世界が動く民意の時代に転換してきている。韓国における「ろうそく革命」や元徴用工による損害賠償請求など、朝鮮半島をめぐる東北アジアの時代的転換は、その一つの現れだと言えるのではないだろうか。

こうした巨大な歴史的転換の時代にあって、最悪の日韓、日朝関係にどう対処すべきか。今、日本は正念場にあると思う。

この問題を解決する主体は、あくまで日朝、日韓国民自身であり、問題解決で鍵となるのは、やはり歴史認識だと思う。日本による朝鮮とアジアに対する悪辣きわまる覇権と植民地支配、この認識が日韓、日朝国民の間で互いに一致していてこそ、その共通の認識に基づき問題を解決することができる。

南北朝鮮と日本、両国国民の間に過去の植民地支配への認識で本質的で根本的な矛盾、対立などあるはずがない。それは、帝国主義者と国民の間のそれとは決定的に異なっている。

民意によって世界が動く歴史の新時代、歴史認識問題の解決に基づく日韓、日朝関係改善への道は広々と開けている。

それは、朝鮮に対する植民地支配から始まった、日本の脱亜入欧、帝国主義覇権の道に終止符を打つ未来に直結しているに違いない。

 

新しい年、2019年を迎えて

2019年1月5日 かりの会ピョンヤン 小西隆裕

新年を迎えながら思うことの一つは、やはり、旧年を振り返り、それがどういう年だったと言えるかということではないかと思います。

旧年、私たちにとって、そして日本にとっても大きかったのは、何と言っても、朝鮮半島をめぐって起こった東北アジアの地殻変動だったのではないかと思います。

一昨年、朝鮮の核とミサイル実験をめぐり一触即発の危機そのものにあった東北アジアに一転、平和と繁栄の新時代が開ける展望を見ることができるようになりました。

ピョンチャン・オリンピックを契機とする南北の積極談合に始まったこの事変は、南北、朝中、朝米のそれぞれ数次に渡る首脳会談を経て、大きく進展しました。

問題は、この大事変にあって、隣国であるわが日本が終始「蚊帳の外」だったことです。

実際、日本は必要とされていませんでした。あってもなくても関係ない存在でした。

その理由は、言うまでもないと思います。日本が完全に米国の一部になってしまっているからに他なりません。日本は国として存在していない。だから必要ない。「蚊帳の外」と言うことは、日本が東北アジアの当事国として存在していないと言うことだと思います。

今日、日本が国として存在していないというのは、何も東北アジアとの関係だけではないと思います。何よりも、国民との関係で国として存在していない。それが最大の問題だと思います。

今、堤未果さんの「日本が売られる」(幻冬舎新書)が多くの人たちの共感を呼んでいます。水から農地まで日本人の資産が売られ、学校や医療、老後に至るまで日本人の未来が売られている。さらに深刻なのは、軍事や金融という国の根幹までが売られてしまっていることだと思いますが、それは、とりもなおさず、日本国民が自らの生の拠り所としての国という存在を失うことを意味しているのではないでしょうか。

人々が政治に何も期待しなくなり、投票所に足を運びもしなくなるのは、余りにも当然です。その結果、20%台という低得票率の安倍政権がいつまでも維持され、日本が骨の髄まで売り払われていく。この悪循環を断ち切ることこそが今切実に問われているのではないかと思います。

新年を迎えながら、そこで提起したいことが一つあります。それは、「取り戻すべきは、日本の国としての存在だ」ということです。

安倍首相は、6年前、「日本を取り戻そう!」と呼びかけて首相の座に着きました。その結果が現状です。今問われているのは、米国の軍事・経済の一部となった「軍国日本」ではありません。日本の国としての存在自体の確立です。

その試金石の一つが東北アジア新時代にどう向き合うかにあると思います。

今、東北アジアに起きている新事態の行方がどうなるか、それをめぐっての情勢分析がいろいろやられていますが、そのための基準は、覇権国家・米国の動きにあるのではなく、どこまでも民意にあると思います。南北朝鮮の民意がどこにあるか、東北アジア関連諸国、特に米国の民意がどこにあるかです。

民意は明らかに、東北アジア新時代の進展を求めています。戦争と敵対から平和と繁栄への時代的転換が求められているということです。

旧年末、米軍のシリア撤退とマティス国務長官の更迭が決まりましたが、西アジアのこの地殻変動が東北アジアに連動してくるのは明らかです。

もちろんトランプ政権は、民意の要求に応えてそうするのではありません。彼らは、どこまでも新しい覇権、ファースト覇権の要求から民意を利用するということです。

新年は、東北アジア新時代の第2ステージがほぼ確実に幕を上げていくでしょう。そこで問われるのが、日本の国としての存在です。

隣国である日本がいつまでも「蚊帳の外」にいるわけにはいきません。しかし、そこで問題は、どう「蚊帳の中」に入るかです。言い換えれば、日朝関係をどう解決するかということです。

米国の一部として、米国に口を利いてもらい、こそこそと「中」に入るのか。それとも、自ら「国」として、「国」としての南北朝鮮に向き合い、植民地支配問題など謝罪すべきは謝罪し、堂々と国と国との関係を築いて、入るのか。それが問われていると思います。

それを安倍政権ができるのか。できないなら、政権交代をしてでも解決するのか。選挙の年である新年、日本と日本国民の前には、そう問題が提起されているのではないでしょうか。

日米韓と朝鮮の古い敵対時代の遺物である私たちの「よど号」問題を見直して帰国することは、まさにこの問題の解決と一体です。そのことを最後に確認させて頂いて、新年のご挨拶に代えさせて頂きたいと存じます。

 

来年の日本政治に望むこと

2018年12月20日 かりの会ピョンヤン 小西隆裕

この数年続いてきた世界政治の地殻変動がいよいよその激しさを増した年、2018年もあと十日余り、新しい年を目前にしながら、来年度日本政治に望む私たちの思いを発信させて頂きたいと思います。

■安倍政権に臨終の宣告を!
今、フランスでマクロン政権に対する怒りが爆発しています。

それを見て、日本のメディアなどからは、マクロン政権の政治と安倍政権の政治、一体どこが違うのか、何も違わないじゃないか、なのに日本国民のこのおとなしさ、これはどうしたことか、といったような声が上がっています。

しかし、それは少し違うのではないでしょうか。フランス国民にはフランス国民のやり方があり、日本国民には日本国民のやり方があるのではないかと思います。

その証拠に、日本でも、沖縄で、君津や川西で、安倍政権の横暴への怒りが吹き出てきているではありませんか。

大きな地の底からの予震を感じます。

安倍政権に臨終の宣告を!

時あたかも、来年は選挙の年、日本国民が怒りの民意を爆発させる時が来ているのではないでしょうか。

■政権交代に向け、問われていること
政権交代に向けて、日本政界の動きがこのところあわただしくなってきているように思えるのですが、どうでしょうか。

野党共闘への合従連衡は、その一つだと言えるでしょう。

そこで一つ提起したいことがあります。

それは、この政権交代を、徹頭徹尾、国民が求める「新しい政治」実現のためのものにするということです。

今日、それ以外に政権交代の意味も可能性もないのではないかと思うからです。

■国民は、「新しい政治」を求めている
国民は明らかに、「新しい政治」を求めていると思います。

この十年余り、民主党への期待も、橋下・大阪維新や小池・希望の党への期待も、国民の要求はそこにあったのではないかと思います。

しかし、新しいと見えたこれら政党、政治家たちも、それに応えられませんでした。と言うより、応えようともしていなかったと言うのが真相だったのかも知れません。

「もう『変革』などと言わないでくれ」という若者たちの声は、その結果だと思います。決して彼らが「新しい政治」自体を求めていないのではないと思います。

■国民第一、国民主体の政治を!

今、世界中でこれまでの「古い政治」が拒否され排撃されており、既存の政党、政治家の影が急速に薄くなっています。

なぜそうなっているのか。原因は、はっきりしているのではないかと思います。

国と社会が分裂、崩壊し、生活が破壊される、このかつてない現実に直面し、「古い政治」がなす術を知らず、まったく無力でそれを促進するばかりだからではないでしょうか。

求められている「新しい政治」は、このどうにもならない現実を変革する意思と力をもった政治、国民のための国民第一の政治、国民による国民主体の政治以外ではあり得ないと思います。

今のこの現実を転換する意思も力も、ただ国民にのみあります。それを米国や大企業に頼ることはできません。

そこで問われて来るのが、国民第一の政策、国民主体の政治の主体だと思います。

来年、野党共闘をはじめ、政権交代に向けたすべての闘い、すべての政治に望むのはそのことです。

それが日朝関係改善のため、引いては、私たちの「よど号」問題見直し帰国のため、決定的な意味を持ってくるのは確実です。

新年も、どうかよろしくお願いします。

 

ローマ法王もピョンヤン訪問快諾、東北アジアは新時代へと確実に動く! ところでわが国は?

2018年11月5日 かりの会ピョンヤン 若林盛亮

二回目の朝米首脳会談開催時期が「年を越す」「いや年内にでも」とトランプの米国はまだ揺れている。次回会談で問われる朝鮮戦争終結宣言は遅かれ早かれやるべきこと。しかしトランプはいかに「米国の面子」を立てるかで揺れ、トルコでのカショギ記者暗殺問題で「サウジ王室擁護姿勢」非難の国際世論への対応、そして「民主党躍進か?」の予想高まる間近に迫った米中間選挙への対応に追われている。これらがトランプをして第二回朝米首脳会談開催時期の決断を揺らがせている要因だろう。

しかしながら南北朝鮮が主体となって主導する朝鮮半島の地殻変動、戦争と敵対から平和と友好、繁栄へと向かう東北アジアの新時代は着実に前へ前へと動いている。

その一例が、世界に一三億というカトリック信者の頂点に立つローマ法王の積極的動きだ。十月一八日にバチカン法王庁で行われた文在寅大統領とローマ法王との面談時、金正恩委員長の法王のピョンヤン招請意向を文大統領が伝えたが、法王は「文大統領の言葉だけでも十分だが、金正恩氏が正式に招待状を送ってくれば、無条件に応じるだろう。」と述べた。

今年初め、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックに南北単一チームとして北朝鮮選手団の参加が決まった際、法王は「南北単一チームはスポーツ精神が世界に教える対話と相互尊重を通じた対立の平和的解決を示す事例」だとして祝福して以来、四・二七板門店における南北首脳会談を二日後に控えた二五日にバチカンのサン・ピエトロ広場で開かれた特別祈祷時間には「二人の首脳の会談は和解の具体的な道のりと兄弟愛の回復に導く尚緒な機会になるだろう」と述べ、南北首脳に「平和の匠」としての役割を果たすと共に、希望と勇気を持つよう祈った。

今回も文在寅大統領との会見を終えながら、法王は「朝鮮半島で平和へのプロセスを進める韓国政府の努力を強く支持する」「立ち止まることなく前に進んでほしい。恐れてはならない」とも話したという。

現ローマ法王フランシスコは南米の親米独裁政権に抵抗した「解放の神学」の伝統のなかで、神父や司教、枢機卿を経験した人物であり、保守的だったヨハネ・パウロ二世やベネディクト一六世に比べ、正義と平和の具現に非常に積極的な人物だ。

以前この欄で書いた二九年前の世界青年祝典に韓国から全大協(韓国の全学連)代表として派遣され、板門店軍事境界線を越えて逮捕、懲役刑に処され「統一の花」と称賛された一女学生、林秀卿(リム・スギョン)もカトリック教徒であったし、彼女と共に板門店を越境、逮捕、懲役刑も共にした神父もカトリック正義具現全国司祭団が派遣した解放神学の流れを汲む人物だった。

こうした中でわが国の外務大臣、河野太郎は「終結宣言は時期尚早だ」とブレーキをかけるのに必死の有様、南北朝鮮、朝米が戦争と敵対を止め東北アジアが新時代に向かうことには反対というのが安倍政権の立ち位置だが、これはもはや世界では異色だ。「私自身が金委員長と向き合わねばならない」と言うのが最近の安倍首相の決まり文句だが、この政権に新しい時代に即した日朝正常化策は出てきそうもない。

最近、小沢一郎・自由党代表が「野党が一つになれば可能」という政権交代論を述べだしたが、私たちの「よど号問題」の最終的解決、帰国闘争対策とも関連するこうした世界と日本の動きについても十一月末の第三次山中訪朝団と討論することになるだろう。

 

南北首脳会談と日本

2018年9月20日 かりの会ピョンヤン 小西隆裕

朝鮮の南北首脳会談が9月18日から3日間、平壌で行われた。

世界的注視と関心の中、隣邦で行われたこの会談に日本としてどう向き合うのかが問われている。

今年4月27日、朝鮮半島の平和と繁栄、統一を目指す「板門店宣言」を採択した前回の首脳会談に続き、今回の会談は、その合意に基づき、それを深め強固化するものとして行われた。

一方会談は、前回がそうであったように、この会談に続き設定されている朝米首脳会談に向け、朝鮮半島の非核化を促進することを目的に行われた。

大きくこの二つの目的を持って行われた今回の会談結果に対する大方の評価は、前者が大きく促進され、南北の融和が一段と深まったのに比べ、後者の前進があまり見られなかったというものだ。

そこで確認すべきだと思うのは、何よりもまず、これまでその分断と敵対が戦争の危機と緊張の根源になってきた南北朝鮮の融和と友好が深まることが、東北アジアの平和と繁栄にとって決定的な意味を持っており、日本にとっても極めて大きな利益になるということだ。今の日本において、この歴史的意義についての国民的合意が決定的に遅れているのではないだろうか。

もう一つは、今回の非核化への合意に基づき、近い将来開かれる予定の第二回朝米首脳会談で、朝鮮半島の非核化が大きく促進され、平和で繁栄する東北アジア新時代が決定的に切り開かれる可能性が十分にあるということだ。

今日、平和と繁栄の東北アジアへの転換は、朝米だけでなく、広く世界的で時代的な要求になっている。今回の会談結果に対する米大統領トランプの賛意と喜び、世界的範囲で高まる歓迎の声は、そのことを雄弁に物語っていると思う。

今、日本に問われているのは、この東北アジア新時代を確実に到来する厳然たる現実としてしっかりと受け止め、その平和と友好、繁栄の実現のため、時代の当事国として積極的に寄与していくことではないか。そこにこそ、アジアとともに、世界とともに進む日本の新しい未来があると思う。

 

翁長さんの遺志を!

2018年8月31日 かりの会ピョンヤン 小西隆裕

8月8日、翁長雄志沖縄県知事が亡くなった。
「命かけ辺野古に心残し逝く」
「仁王立ち矢ぶすま覚悟で逝きにけり」
知事急逝の報直後から新聞社へ相次いだ投句の数々。翁長さんは、沖縄の心を背負って命を懸けた、県民のお父さんのような人だったという。

「イデオロギーよりアイデンティティ」「オール沖縄」。保革、左右の壁を超えて全沖縄県民を一つにしたこのスローガンは、まさにそこから生まれたに違いない。

今、世界は、自分のもの、自分たちのものを求めている。「沖縄」を掲げた翁長さんは、それに応え、その先端を切り開いた。

辺野古新基地反対闘争は、沖縄の自己決定権を求める闘いとして、折から興った立憲主義・反安保法制の幅広い全国民的運動とともに、さらには世界に巻き起こる自国第一主義の嵐とともに、かつてない運動の高揚を生み出した。

だが、その翁長さんはもう居ない。闘いの柱を失い暗然たる中、遺されたわれわれに問われていることは何か。時代は、今、大きな転換の時を迎えている。

米国によるグローバル覇権が破綻・崩壊する中、戦争と敵対から、平和と友好、繁栄へ、東北アジアに生まれ、世界を震撼させる地殻変動。

南北朝鮮が平和と繁栄、統一を求め、主導するこの歴史の新時代は、自分のもの、自分たちのものを求めてうねる、世界史的運動の一環であり、その新しい発展だ。

今こそ問われているのは、翁長さんの遺志であり、遺志を全面的に実現することではないだろうか。

新たな時代的状況に対応するため、米国は今、日本の政治経済的、軍事的な一層のアメリカ化、その一環としての辺野古をはじめ沖縄と南西諸島の日米共同軍事基地化を一段と強化しようとしている。

そうした中、沖縄戦の犠牲者らを悼む直近の「慰霊の日」、その平和宣言で翁長さんは、「民意を顧みず工事が進められている辺野古新基地建設については、沖縄の基地負担軽減に逆行しているばかりではなく、アジアの緊張緩和の流れにも逆行している」と基地建設の時代への逆行、反動を戒め、それに抗する闘いを訴えた。

自分のもの、自分たちのものを求める民意に応え、その民意に訴えて、世界と東北アジアの新しい時代的流れに合流すること、この翁長さんの遺志にこそ、「オール沖縄」の闘いをアジアとともに進む「オール日本」の闘いと一体に、決定的勝利に導く鍵が秘められているのではないだろうか。

 

大国のパワーゲームを終わらせる東北アジアの地殻変動

2018年8月5日 かりの会 ピョンヤン 若林盛亮

かりの会帰国支援センター総会が、新橋カンファレンスセンター6階会議室で7月29日に開催される。

今総会は、南北首脳会談、朝米首脳会談後に起きつつある東北アジアの地殻変動という新しい情勢下で開かれるが、「よど号問題」見直し帰国闘争の最終決着のための好機として、この地殻変動を正しくとらえるべきであるという主旨で開かれる。

第一部は活動報告として、ツイッター“yobo_yodo”、ウェブサイト「ようこそ日本人村」の現況、そして新たなK子さんへの「旅券再発給の闘い」について経過説明がなされる。

そして今総会の主旨からして目玉は、第二部「どうなる日朝関係! 訪朝報告」になる。

慰安婦問題を中心に日朝間の懸案問題解決に取り組まれているフォトジャーナリスト・伊藤孝司氏はじめ今年、訪朝された三名の方が生々しい現地報告をされる。またシンガポール現地で取材された浅野健一氏からの生の朝米首脳会談レポートが予定されている。

この方たちの報告が具体的にどのようなものになるかは知るよしもないが、この間「救援」紙上で述べてきたように「主役はトランプではなく南北朝鮮」であること、南北それぞれが「いじめに強い」体質造りに成功し、いまは南北が力を合わせて「いじめをなくす」(大国のパワーゲームの利用物にならない)段階に突入した、この東北アジアの地殻変動の本質を少しでも感じていただけるものになるのではないかと期待している。

わが国ではいまだに朝米首脳会談の評価が旧来の思考方式、「大国のパワーゲーム」の域を出ず、今後の対応でわが国が大きな過ちを犯すのではないかと危惧している。

一例をあげれば、朝米首脳会談を前後して金正恩委員長が三度に渡り訪中したことをもって、「朝鮮が再び中国を後ろ盾にした」とか「朝鮮問題が中国主導になった」という見解がまかり通っている。また朝米首脳会談は「今秋の米中間選挙を前にしたトランプのパーフォマンスにすぎない」といった類の議論が事の本質をわからなくさせている。要するに東北アジアで起きている事態は、大国のパワーゲームの延長上にあるものであり、大国による「いじめ」構図に変わりはないという見方だ。

この見方からは東北アジアの新事態に対するわが国の対応は誤ったものになる。

その端的な例は「日本が最前線になる」論、朝鮮半島の軍事境界線がなくなればパワーバランス上、「中国を後ろ盾にした北朝鮮」に対し日本が最前線とならざるをえない、といった論議だ。最前線の役割を担う以上、集団的自衛権行使容認範囲を拡大すべきだし、ひいては憲法9条第二項「交戦権否認、戦力不保持」削除、すなわち自衛隊が敵攻撃能力、戦争能力を持つことに踏み切るべきだという議論に導かれていく。現に秋の自民党総裁選に出馬をめざす石破茂元防衛大臣はこのような発言をしている。それはわが国が憲法9条の縛りを抜けて米軍と一体化し、戦争能力を持つパワーとしてアジアで米覇権を支える国になるという時代遅れの思考方式だ。

東北アジアの地殻変動の主導力は、大国の利用物にはならないという南北朝鮮であり、その事態の本質は大国のパワーゲームの時代を終わらせるものであるというところにある。

「北」はソ連圏にも入らず、中国の風下にも立たず自主、自立、自衛の国造りをやった上で、対米対決戦ではその最終決着として米本土全域を射程に収める核ICBM保有、国家核武力完成によって米国の対朝鮮軍事力行使を不可能に追い込んだ。

「南」では親米傀儡・李承晩政権を倒した一九六〇年の4月革命とその挫折以降、親米軍事独裁政権に対する民主化の闘いが連綿と継承され、一九八〇年の光州人民蜂起を契機に反米自主、統一が民主化の一環として闘われるに至り、その闘いの伝統が昨年のろうそく革命による文在寅政権、「北」との戦争状態終結、統一をめざす政権を生んだ。

このような「大国のパワーゲームを終わらせる」南北朝鮮の闘いの結実として南北首脳会談、朝米首脳会談があり東北アジアの地殻変動がある。

私たちはこうした観点に立って、大国のパワーゲームの時代、対朝鮮敵視時代の遺物である「よど号問題」の最終的清算をめざす闘いにより積極的に取り組んでいく決意である。

 

東北アジア新時代への地殻変動を正しく見、正しく対処することが必要

2018年7月10日 かりの会 ピョンヤン 若林盛亮

南北首脳会談から朝米首脳会談で大きく動き出した朝鮮半島を中心とした東北アジアの激動、新しい時代の地殻変動にわが国が対応できず右往左往しているように見える。

小野寺防衛大臣は、朝米首脳会談時の記者会見での「善意の対話が続く間は米韓合同軍事演習を中止する」トランプ発言に、「日本の抑止力を弱めるもの」と猛反対、のちにそれが米政府の公式見解とされるや「評価する」と前言を翻したものの「米韓合同軍事演習は必要なもの」と不快感を隠さなかった。今回の朝米首脳会談に対する評価において日本の政界、言論界では「北朝鮮の非核化の内容に乏しい」とか、「譲歩しすぎ」などと否定的なものが多い。総じて朝鮮半島において戦争状態を終わらせ、東北アジアが平和地帯、非核地帯へと変貌をとげようという時代の変動を直視できずにいる。

1970年代にあった突然の米中国交正常化で世界を驚かせたその立て役者、ニクソン政権時の安全保障担当補佐官であったキッシンジャーは、2017年初頭、トランプ政権が発足した時、「かれにはチャンスが与えられるべきだ」と題して中央公論(3月号)に寄稿した。

「歴史をひもとけば、例えば欧州の『一八四八年革命』(自由主義、ナショナリズムの高揚により、欧州で次々に革命が発生し、ナポレオン戦争後の国際秩序を担ってきた国王、貴族による『ウィーン体制』が崩壊した)の例もある。この時も、いくつもの激変が同時多発的に起きたが、2016年は、それが地球規模で起きた」
これは2016年に起きた英国のEU離脱など欧州各国で「自国第一主義」台頭など、グローバリズム拒否の台頭とトランプ大統領の誕生を重ね合わせたキッシンジャーの時代認識だ。

戦後世界の覇権秩序であった米国中心の国際秩序が音を立てて崩れている、この世界的地殻変動の時期に、古い秩序の「破壊者」、新しい覇権秩序を立てる大統領としてトランプに「チャンスは与えられるべきだ」というのがキッシンジャーの結論だ。

朝鮮半島の地殻変動について言えば、北と南でそれぞれ「いじめに強い」体質を培ってきた南北朝鮮民族が、トランプに戦争状態終結、分断と敵対の禍根である軍事境界線の撤廃を迫る、これが南北首脳会談から朝米首脳会談へと進展する事態の本質だった。

「反テロ戦争」を掲げたブッシュ政権時、「核先制攻撃の対象国」にあげられた「北」は、米本土全域を射程に収める核ICBM保有という「国家核武力計画完成」によって、米国が「北」に対し軍事力行使・戦争に訴えることを不可能にし、他方、「南」の「ろうそく革命」が産んだ文在寅政権は、昨年の「一触即発の朝鮮半島危機」に際し、韓国政府の承認なしには朝鮮半島での軍事力行使、戦争は起こさせないと強く米国に要求した。韓国軍は戦争に協力しないという意思表示だ。南北それぞれが「いじめに強い」体質造りに成功し、いまは南北が力を合わせて「いじめをなくす」段階に突入した、それが今年に入っての地殻変動の正しい見方だ。

東北アジア新時代、その地殻変動の本質は、もはや大国の覇権的利益、都合によって東北アジア諸国の運命が左右されない、そのような時代をつくっていこうということだ。

日米安保基軸で軍事は米国に委ね「軽武装と経済至上主義」のスローガンの下、米中心の世界覇権秩序の恩恵を受け「繁栄」を謳歌できた戦後日本神話、「米国についていけばなんとかなる」という時代は永遠に過去のものになった。

時代の地殻変動を直視し、自分の眼で世界を見、自分の頭で対処する、新しい日本に生まれ変わる好機にしていくべき時が来たのだ。東北アジア新時代の地殻変動に応じた新生日本の形を日本人すべてが考えることが問われていると思う。

 

主役はトランプではなく、南北朝鮮であることが明らかに

2018年6月5日 かりの会 ピョンヤン 若林盛亮

朝令暮改、これがいまの米覇権帝国の現実であることを世界は知った。五月二五日、朝には「朝米会談中止」を世界に宣言したトランプが夜には「予定通り6月12日にやる」と態度を一変させた。

こ日の夜、私たちはBS放送の「深層NEWS」を見ていた。テーマは「トランプの米朝首脳会談中止の表明について」だった。ところが番組終了間際、「予定通り六月一二日に米朝会談は行われるだろう」というトランプ発言の速報が入った。米国政治専門の政治評論家、渡部恒男氏は「これは米国の権威を落とすもの」と苦り切るしかなかった。

事の発端は、朝米会談を前にしたボルトン大統領安全補佐官の「北朝鮮の完全非核化が前提、その前にはいっさい見返りを与えない」発言だが、これに朝鮮の金桂冠第一外務次官が「一方的な核放棄を要求するなら、朝米会談を再考せざるをえない」と応じ、さらに崔善姫外務次官は、「哀願外交はしない」、「米国のとるべき態度は朝米対話の席に着くか、核対核の核対決戦に出るのか二つに一つだ」、すなわち米国には対話か戦争か二者択一の道しかないと決心を迫った。

朝米首脳会談の本質は、米国が朝鮮に非核化を迫るところにあるのではない。先月、この欄で書いたことだが、再度、記すことをご容赦願いたい。

四月二七日の南北首脳会談、その結実である板門店宣言の基本精神は、朝鮮半島の平和と繁栄、統一であり、その実現主体が「わが民族同士」、南北朝鮮民族であることを謳ったことだ。それを象徴するのが朝鮮戦争停戦六五周年の今年中に戦争終結を宣言し強固な平和体制を築くという南北合意であり、それはすなわち「北」との戦争当事者である米国には停戦協定廃止、平和協定締結を迫るということだ。朝米会談はそのためのものだということを示唆したものだ。

崔善姫氏の「対話か戦争か」、米国に決心を迫る発言の主旨は、米本土全域を射程に収める核弾道ミサイル「火星一五型」試射成功によって「国家核武力計画完成」宣言をした朝鮮に対して米国には戦争の選択肢はなく対話に出るしかない、嫌であろうとこの現実を受け入れなさいということだ。

「あさま山荘への道程」の若松孝二監督はピョンヤンでお会いした際、「朝鮮は俺と同じだ、いじめに強い」と言われた。「北」は解放後、米国など大国の「いじめに強い国」造りをしてきた。他方、「南」はどうか? 顔面に大やけどを負わされた在日留学生、徐勝氏への拷問事件、銃剣で鎮圧の光州人民蜂起大虐殺、学生らのビルからの抗議の投身自殺続発などで世界に悪名を轟かせた歴代親米軍事独裁政権の苛酷な弾圧に抗して「いじめにめげない主体」を築く学生運動、労働運動など民主化、祖国統一のための闘いの火種を絶やさなかった。そしてその結実が昨年の汎国民的な「ろうそく革命」によって産まれた文在寅政権だ。俗に「八六五世代」政権、「八〇年代に学生運動を経験した六〇年代生まれの五〇歳代」の政権と言われている。前号でも書いたように、三十年前に韓国外大の女学生、「統一の花」と称賛された林秀卿(リム・スギョン)のピョンヤン派遣を成功させた「罪」で懲役刑に処せられた伝説の学生運動リーダー、全大協議長、その人がいまは南北首脳会談を取り仕切る大統領特別秘書室長、任鍾晳(イム・ジョンソク)氏であることは象徴的だ。

北と南でそれぞれ「いじめに強い」体質を培ってきた南北朝鮮民族が、トランプに戦争状態終結、分断と敵対の禍根である軍事境界線の撤廃を迫る、これが南北首脳会談から朝米首脳会談へと進展する事態の本質だ。南北それぞれが「いじめに強い」体質造りに成功し、いまは南北が力を合わせて「いじめをなくす」段階に突入した、それが今年に入っての事態の正しい見方ではないだろうか。

一方、トランプの朝令暮改ぶりは、戦勝国が敗戦国に迫るがごとき「北朝鮮の完全な非核化が前提」の看板で体裁だけでも取り繕おうとしても、それすら否定されて右往左往する米覇権帝国の零落ぶりを世界に示すものだ。

南北首脳会談から朝米首脳会談への大舞台の主役は、トランプではなく南北朝鮮民族であり、彼らの「いじめをなくす」闘いだ、そう見て間違いはないと思う。

 

メッセージ2018年~新年に当たり、申し上げたいこと

2018年1月1日 小西隆裕

新年、明けましておめでとうございます。サイトを立ち上げてから最初の正月を迎えました。そこで、私たちが新しい年、2018年をどうとらえ、どう迎えようとしているのか申し上げようと思います。

新年について最近よく言われるのが、1868年、明治維新から数えて150年だということです。こういう「節目」というものがどれだけの意味を持っているのかよく分かりませんが、一つ思うことがあります。それは、あの時、欧米覇権が押し寄せてきたとすれば、今はその崩壊が押し寄せてきているということです。

150年前の日本は、押し寄せてきた欧米覇権を「攘夷か開国か」の大議論で迎え、維新を挟み、結局、「開国」「脱亜入欧」でそれに応えました。それが欧米に従属しアジアに覇権する従属覇権の日本の歴史を決めたと言うことができるでしょう。

では今、米覇権崩壊の現実に日本はどう対しようとしているでしょうか。
150年前、欧米覇権の象徴は、1853年襲来したペリーの「黒船」でした。それに対し今、米覇権崩壊の象徴は何か。そこで思い浮かぶのは、旧年行われたトランプによるアジア歴訪です。やって来たのは今にも沈没寸前の「泥船」でした。

この「襲来」を契機に、「攘夷か開国か」ならぬ、「米国につくのか中国につくのか」、はたまた「覇権多極化か」、等々の議論が、このところ深まって来ていた「混迷」を一層抜き差しならぬものにした感があります。

そこで提起したいことが一つあります。それは、新年を迎えながら、「立憲自主か従米改憲か」という角度から日本の進路について考えてみるのはどうかということです。

旧年、あの「安保法制・改憲」を踏み絵とする小池「選別・排除」に対し、立憲主義、民主主義を旗印とする立憲民主党が大きな国民的支持を受けて誕生・躍進しました。そして新年早々、トランプべっちゃりの安倍首相が2020年、日本を「戦争できる国」へ生まれ変らせる「改憲」への意欲を露わにしています。

そこで、「立憲自主か従米改憲か」の議論です。米国の意思ではなく、どこまでも日本国憲法に基づいて政治を行う立憲自主の道に進むのか、それとも、米国言いなりに改憲し、米国と共同で戦争する従米改憲の道に進むのかという議論です。これは、民主か独裁か、平和か戦争かの闘いであると同時に、米覇権崩壊の現実に直面しながら、古い覇権の世界そのものと決別し、アジアとともに世界とともに、脱覇権自主の新しい道に進むのか、それとも、あくまで米覇権、覇権世界そのものにしがみつき、従米覇権、従属覇権の古い道にとどまるのかの闘いだと言えると思います。

新しい年、2018年を迎えながら、私たちは、この議論に積極的に参加し、立憲自主の新しい日本実現のため、少しでも寄与できればと考えています。どうかよろしくお願いします。

 

サイト開設に当たって

2017年11月25日 小西隆裕

皆さま、こんにちは。朝鮮・ピョンヤン、よど号日本人村へおいで下さり有り難うございます。皆さまは、当方最初のお客さまです。
この度、私たちは、当ウェブサイト「ようこそ、よど号日本人村」を開設し、日本の皆さまと広くお付き合いさせていただくことにしました。

1970年の3月31日、私たちが日本を飛び立ち、日航機「よど」をHJして、朝鮮に来てから、47年を超える長い歳月が経ちました。当初、日本で武装闘争をするため、朝鮮を国際根拠地とし軍事訓練もしようとやって来た私たちでしたが、物事、やはり現実の要求と条件に合わないことは成就できません。自らの至らなさに思いを致した私たちは、新たな闘いに出発しました。それからの長い歳月、何があったか、それについては、サイトの各種コーナーでのお付き合いを通じて、今後ご理解いただき、お互いの意思の疎通を図っていければと思っています。

こうしてサイト開設を目前にした、去る11月14日、思いがけないことが起こりました。私たちのかつての責任者、塩見孝也さんが心不全で亡くなったのです。悲しく残念な報でした。サイトの開設は、私たちの心と環境に相応しいものではなくなりました。しかし、いつまでも開設を伸ばしている訳にはいきません。それは、故人の望むところでもないと思います。

今、サイト開設のご挨拶を行うに当たって、まず問われていること、それは「なぜ今、サイト開設?」なのではないかと存じます。日本との関係最悪の国、米国から世界でもっとも危険な国と烙印された国、その「注目」の国、朝鮮から、もうほとんど生きた化石と化しつつある私たちが、こともあろうにウェブサイトの開設とは、ということです。

サイトを開設することは、もともと私たちの切なる願いでした。このSNSの時代、手紙などペーパーを通じての発信、交流は、いかにも時代遅れそのものです。そこで3年ほど前から、国内の支援者のお力添えで、ツイッター「yobo‐yodo」を始めました。結果は予想を超えたものでした。返ってくるのは、いわゆる「ヘイト」の山と連続。さすがの私たちも、いささか閉口、という時もありました。しかし、考えてみれば、彼らがそう言うのももっともです。要は、その思いにどう応えていくかです。

今、世界は動き、時代も動いています。トランプ大統領の登場は、その象徴だと言えるでしょう。このかつてない時代にあって、国内の方々の声にお応えしながら、祖国日本の現実に、私たちなりの視点から提言し、帰国へ向けての訴えを発し、ご理解を得て行くのは、決して容易なことではありません。今回開くサイトに私たちは、「議々論々」や「よど号LIFE」などいくつかのコーナーを設け、それらを通して、私たちの見解だけでなく生き様まで、私たちを丸ごと知っていただいて議論し、その輪を広げていけるならと切に願っています。

どうかこれからのお付き合い、よろしくお願いします。