よど号LIFE 2020年10月号

深夜の閲兵式

小西隆裕 2020年10月20日

休日(朝鮮労働党創建記念日)、一人での夕食を終えて、7時、テレビのスウィッヂを入れた。出てきたのは、丁度、閲兵式開始の軍楽隊隊列行進の最初のところだった。

ところが、どうも様子がおかしい。

雰囲気が完全に夜だ。昼間にやったものの録画ではない。これは実況なのか。

しかし、夜空は真っ暗だ。どう見ても、午後7時の空ではない。

そうこうしている中に、隊列行進が終わり、テレビには何か釣り鐘のようなものが映し出され、その鐘の音が聞こえてきた。

と同時に、画面に映し出されたのは大きな時計だ。見るとその針は0時を指している。

と言うことは、閲兵式は真夜中に行われていると言うことだ。

と画面中央には、金正恩委員長を先頭に朝鮮の幹部たちが会場に入場してくる姿が映し出されている。

それでようやく合点がいった。閲兵式は、10月10日、党創建記念日に入るとともに開始されるという趣向なのだ。これは、その録画なのだ。

いやいや驚いた。朝鮮に来て50年、これまで閲兵式は何度も見てきたが、真夜中の閲兵式は初めてだ。

これから何が起こるか。

51年前、比叡山から見た琵琶湖と京都市街

若林盛亮 2020年10月20日

日本人村も樹々が色づく季節になった。

晩秋の11月初旬、澁谷ロフト9で「よど号HJ五〇年」のトーク・イベントがある。もうそんなに時が流れた。

51年前、私の赤軍派参加もこの季節だった。10月の末か11月初頭、上京を目前に控え私はひょんなことから比叡山に来ていた。もう紅葉の季節に入っていたと思うが、とてもそれを楽しむ気分にはなれなかった。

比叡山には琵琶湖と京都市街が同時に見下ろせる場所がある。私を育んでくれた近江の湖、そして青春時代の数々の遍歴、その思い出のつまる古都の町並みがかなたに広がっていた。

私の上京、軍事の次元に踏み込む赤軍派参加、それは非日常の生活に入ること、こうやって穏やかな気持ちで故郷の風景を見ることはもうないだろう。なぜか胸が切なくなって、琵琶湖にも京都にも「ありがとう」と言いたくなった。

でもそれは悲しいお別れではなくて、新しい明日への出発に向かう私の過ぎ去った時間への感謝のようなものだったと思う。

晩秋の季節、あるいは「よど号HJ五〇年」という節目を迎えたからか、赤軍派参加を前にした51年前の光景がよみがえったのかもしれない。

「yobo_yoboになってもyodo号はyodo号」のyobo_yodo! 世界を見ても時代を見ても、いま日本の進路が問われるとき、これからが闘いのとき、残る老いの微力を尽くすとき! 琵琶湖も京都も静かに見ていてほしい。

水風呂

赤木志郎 2020年10月20日

私は風呂ではサウナを利用している。サウナを利用しているのは、私と小西さんだけ。

小西さんはサウナを利用しはじめた時から水風呂に入る。私はとても冷たい水風呂に入れなかった。ところが、一ヶ月前、私もできるのではないかと試みた。やってみると、水風呂に浸るのが気持ちが良いのである。熱い風呂に入るより気持ちが落ち着く感じだ。

サウナと水風呂に交互にはいるのは、副交感神経の働きが正常になり、暑さ寒さに対応できるようになると言われている。風邪を引かなくなったのもこのせいかもしれない。

ところで、日本の風呂の歴史の本があったので読んでみると、日本でも古代は蒸し風呂が主流で、時代を経るのなかで湯浴みが主流になったそうだ。朝鮮では湯浴みではなく、サウナが主だ。しかも、身体をごしごしこすって垢を落とす。私はあまりこすらない。日本では湿気が多く汗を流すために風呂に入るので湯浴みになったのではないかと推察している。そういえば、風呂に入ることを「汗を流す」というのではないか。

「所変われば品変わる」とよく高校の地理の先生が言っていた。風呂も国によって異なる。

オノマトペ

魚本公博 2020年10月20日

オノマトペ、音や声などをまねた擬声語(ざあざあ、じょきじょきなど)や状態などをまねた擬態語(てきぱき、きらきらなど)のことでフランス語(onomatope)だそうですが、日本語には、これが非常に豊富だとかねがね思っていたところ、最近、日本語学者の山口仲美さんが50年以上の研究成果を著作集(全8巻)として出し、オノマトペは日本語の特色であり、日本語を豊かにしていると指摘。山口さんによれば、日本のコミックが世界に羽ばたけたのもオノマトペのお陰だとか。

BS1(NHK)のクール・ジャパンでも取り上げていましたが、雨の降り方も「ぽつりぽつり」「しとしと」「ざーざー」「どしゃぶり」などがあります。ドイツ人の出演者がドイツ語では「ざーざー」も大雨というしかないと言っていましたが、そういう豊富な表現を持っている私たちは幸せだと思います。

朝鮮語もオノマトペが豊富です。チャグンチャグン(丁寧に)、フリフリ(背が高く立派な様)、ドゥンシルドゥンシル(踊る様)、いかにも、そうした様子が目に浮かびます。同じ言葉を繰り返すところなども同じです。

とこで、オノマトペは言語としては幼稚、未熟とされてきたもの、いわば弱点。山口さんは、それに異を唱え日本語の優れたところと見るわけですが、一見、弱点と見えるところに実は強さ優れた点がある。そうしたことを考えさせられるオノマトペです。

よど農場の実りに思ったこと

森順子 2020年10月20日

夏からこれまでは、よど農場の豊富な実りで新鮮ないろいろな野菜にお世話になりました。キュウリ、ミニトマト、大きなエンドウ豆、ナス、トウガラシ、ゴーヤ、カボチャ、ネギ、ニラ、しそ、この間までは、サルナシというキウイの仲間と枝豆を毎日、頂き、今は里イモ、ジャガイモ、サツマイモ、ニンジン、大根、そして今日は、ゴボウ、ショウガまで

登場しました。数えてみると20種類以上にもなります。

葉が紫で、臭いもなく炒めても生でも食べられるつるむらさきという植物も毎年あるのですが、貧血症にもいいらしく見るからにビタミンが豊富な感じなので、リンゴとニンジンのジュースに入れると、とろっとして、とてもおいしくなり体にもいいよねと、納得しています。

朝鮮では、「何を考えて食べているのか」とか、「何も考えず食べるな」ということをときどき聞きます。たぶん日本で言う米一粒も88日間も掛かるという意図と同じだと思いますが、そこには、自分にもたらされたものには、必ず、それをもたらしてくれる人の心や時間や手数が込められていることを忘れてはならないということでしょう。改めて、このことに気づいたよど農場の実りに感謝です。

コオロギ

小西隆裕 2020年10月5日

私の家には一匹のコオロギがいた。

そのコオロギが夜になるときれいな音色で鳴き始める。

鳴き声は、台所からも、風呂場からも、居間からも聞こえてくる。

真っ暗なのでその姿は見えない。

私が用事でその音色の出所に近づいて行っても、

灯りをつけても、

ラジオを持って行っても、

簡単には鳴きやまない。

だいぶ肝の据わったやつだ。

何を食べて生きているのだろう。

心配になって、食堂などにキュウリの輪切りにしたのを置いてやったが、

食べているのかどうか分からない。

そのコオロギの音色がこのところ聞こえなくなった。

やはり寿命だったのだろう。

虫とは言え、同居人がいなくなると寂しいものだ。

しかし、その音色は私の耳の奥で今も生きている。

果たして「麒麟」は来るのか!?

若林盛亮 2020年10月5日

朝鮮半島直撃の台風8号の影響で衛星放送が見れなくなって久しい。もうちょっとというところだがまだ少し時間がかかりそうだ。楽しみにしていた大河ドラマ「麒麟」を最低4回分以上見逃したことになる。

私は主人公の明智光秀より信長と正室・帰き蝶ちょう(濃姫)の絶妙コンビがお気に入り。

絶体絶命の窮地も冷徹明利な帰喋の助言で乗り越える信長、だから帰蝶さんは信長の「名参謀」。「みんなは俺を悪く言う。ところがあいつはいつも俺を褒ほめてばかりおる」と惚気のろける信長にとって帰蝶さんは賢夫人ながら、また「母」のような存在。脚本家による帰蝶像だろうが、演じる川口春菜さんも素敵でとにかく帰蝶さんはカッコイイ。

10月中には見れるようになると思うが、どうかそのときまで帰蝶さん登場場面が残っていることをただただ願うばかり。

ところで明智光秀といえば本能寺、私の京都時代、御池通りに面して本能寺会館があった。裏手には本能寺、そこに知り合いが勤めていて所用で立ち寄った時のこと。

外が騒がしいので見たら、一緒について来た立命全共闘の友人の一人がアジ演説を始めていた、「高校生の学友同志諸君!・・・」と例の調子で。外に出て見ると修学旅行中の高校生が窓際に鈴なりに集まって来て「ガンバレー!」とかやんやの拍手喝采を送っていた。本能寺会館は修学旅行生の宿泊施設にもなっていた。

時は1969年秋、私が赤軍派参加のため上京直前の頃、衰運に向かう革命の火を再燃させる「麒麟」が現れるべき時期だった。あの高校生たちも「麒麟」の登場を心待ちにしていたのかもしれない。

後で「ああいうことは止めてくれない!」と知り合いにはきつく叱られたが・・・

修学旅行

赤木志郎 2020年10月5日

コロナ禍で文化祭、合唱コンクール、運動会、修学旅行などの行事が中止されている。新聞読者欄に修学旅行をなんとか実現してほしいという高校生の投書がいくつかあった。

私も中学、高校のとき、そうした行事の思い出が今でも忘れることが出来ない。とくに修学旅行がそうだ。小学生の時は伊勢、中学生の時には四国、高校生の時には九州めぐりだった。伊勢ではサザエの壺焼きを美味しさが、四国では土讃線の列車から見る大歩危小歩の美しさ、九州では阿蘇山や宮崎の鬼の洗濯板が印象的だった。修学旅行は二度とできないものであり、学校生活の最大の楽しみだといえる。だから、投書した高校生の気持ちがよくわかる。

そんな時、GoToトラベルが実施され、国による援助がなされている。問題は多分にコロナ感染拡大のおそれがあることだ。また、国民の税金で旅行補助する必要があるのかの疑問もある。

旅行解禁しながら、高校生たちの思い出にツケを回すのはおかしいと思う。2月以来のコロナ対策の不備がさまざまな形で表れている。

リンドウ、あんた強いんだねー

魚本公博 2020年10月5日

秋たけなわのこの頃、村の周辺では秋の野草が綺麗です。私は青い花が好きですが、ちょっと前まではキキョウが心を和ませてくれました。そして今はリンドウ。リンドウはことのほか青色が鮮やかでお気に入りです。

ところで、最近、リンドウ出荷高全国1位の岩手県の研究所がリンドウは花びらでも光合成を行っていることを発見したとか。それで、花のもちをよくしているらしい。リンドウの鮮やかな青もそこに原因があるのかもしれません。

なかなかしたたかな生存戦略。「リンドウ、あんた強いんだねー」です。深山にひっそり咲くような花で、ともすれば周辺の木々や雑草に負けそうで憐憫の情が湧くほどでしたが、見方が変わりました。それは名もなき庶民の力強さにも通じるもの。コロナ禍の中、経済など一体どうなるのかという暗然たる気持ちにもなりますが、それを突破して前に進むのも人間。そうしたことを思い起こさせる今年のリンドウです。

実りの秋、心配の秋

若林佐喜子 2020年10月5日

朝晩は肌寒く、慌てて秋物を引っ張り出す今日この頃です。今年は、コロナ禍に豪雨、台風8、9、10号でやれやれの連続の日々。気づけば、いつしか実りの秋、ピョンヤン郊外の田野も黄色く穂がたれ、稲刈りの季節です。

よど農場では、天候不順にもかかわらず、直径35㎝のお化けカボチャとおおーきなサツマイモを収穫。例年なら、「『芋煮会』でもやろうか?」との声が出るのですが・・・。 

振り返れば、渡朝50年、節目の年にとスタートした今年でした。しかし、ついに、世界の新型コロナウイルスの感染者が3千万人を超え、死者が100万人に。朝鮮では、先日(9/29)も、「国家と人民の安全のため、防疫活動を朝鮮式、朝鮮の知恵でさらに強化」と、国境封鎖、日常の消毒、マスク着用、検温が続いています。

一方、日本では、8月に「第2波」が発生したにも拘らず、10月から東京都も参加してのGo Toキャンペーン、更なるイベントの緩和、外国人の入国制限も緩和方向に進んでいると聞いています。大丈夫なのだろうかと心配は増すばかり。そのような中で、「『新型コロナは、10人中8人は他の人にうつさないこともわかっている』『家庭内感染が広がっているが、《3密》の場所をなくし、懇親会などに参加することを避ければ、自分の身を守ることはできる。』」(国際医療福祉大教授 和田耕治、読売8/19)ですって??!! 

 感染症の防疫原則は、検査と入院(隔離)、治療と言われています。人々の生活の基本単位である家庭で、「3密」の場所を一体どうやってなくせというのでしょうか? さらに酷いことに、政府、厚生労働省は、軽症者の自宅療養の奨励、条件緩和までも。「これでは、自己責任の押しつけも限界です!」と、一人憤慨する私。

実りの秋を迎えながらも、とても「食欲の秋」どころではありません。皆様の心身の疲労が気になります。季節の変わり目、どうかくれぐれもお身体ご自愛下さい。