何とも情けない

魚本公博

5月29日の「朝日川柳」に、「会談を やるもやめるも 米を支持」というのがあった。

注目の朝米首脳会談を前に、「やる」「やめる」と二転三転するトランプ。そのたびに、「支持」を表明する安倍首相を皮肉ったもの。

それにしても、「やる」「やめる」という正反対のことを「支持する」とは、米国が言うことは何でも支持するということで、これほど「自分の頭で考える」という思考の欠如を示すことはない。

6月2日、前日、朝鮮労働党副委員長・金英哲氏との会談を受けて、トランプは、朝鮮が主張する「段階的な非核化」の線で会談が行われることを示唆したばかりか、「これ以上『最大限の圧力』という言葉は使いたくない」と述べた。

これまでも朝鮮問題を巡って、「孤立」「カヤの外」という声が内外から起きていた安倍首相だが、ここに来て、米国からも「ハシゴを外され」「裏切られ」「見捨てられ」た形で、何とも情けないことこの上ない。

米国の言うなりで「自分の頭で考える」ことをしなかったことの結果であり、報いである。それは戦後一貫して行われてきた対米従属の政治のあり方が完全に破綻し、それではやっていけなくなったことを示している。時代はどんどん変化し、最早、米国覇権を頼みにし、それに従って行けば何とかなるという時代ではない。

問題は、「自分の頭で考える」政治をどうすれば実現できるかである。自民党が安倍に代えて新しい総裁を立てたとして、それが可能だろうか。はたまた野党にそれが可能だろうか。

それを考えると暗然とした気持ちになるが、川柳が示すように、国民は鋭くみていると思う。

モリカケ問題でも、国会で論戦しても埒が明かない中で、「国民の怒りの声をぶつけるしかない」の声が高まっているが、国民の声を直接政治にぶつけ、それが主導するような政治が求められているのだと、切に思う。