アジアの内の日本 2019年10月号

香港問題を考える

小西隆裕 2019年10月20日

香港問題が深刻だ。同じアジアの問題として、傍観することはできない。

その上、起きている運動は、四年前、日本のSEALDsの運動などとも連帯した雨傘運動の流れを汲んでいる。

だから、中国当局の運動への対応など見ると、もう少しやり方があるのではと思う。

しかし、これはどこまでも中国内部の問題だ。中国と香港を対立させ、中国政府を攻撃するような姿勢は正しいと言えないと思う。

そうした中、米国は、この問題を「全世界民主化」運動の一環として問題にする姿勢を露わにしてきた。

香港問題を、中国自身が自らの問題として、中国の主権と香港の自主性を統一的に実現する一国二制度の方針を貫徹するよう見守るのか、それとも、この問題を、全世界の民主化の問題として、米国をはじめ世界各国が介入して解決するようにするのか、どちらが正しいのか、答は言うまでもないのではないだろうか。

いかなる問題も主体のない解決はあり得ず、主体はどこまでもその国の人々だ。

どんな問題でも、その国の人々が主体となって闘ってこそ、もっとも円滑な解決を見ることができる。

「民主化」を標榜した米国主導の「カラー革命」が、一つの例外もなくその国々の破滅的混乱を引き起こしただけだったのはその何よりの証左だと思う。

トランプの「日米安保破棄」発言と安倍「改憲」の危険な関係

若林盛亮 2019年10月20日

6月末の大阪でのG20開催を前にトランプが自身のツイッターで「日米安保破棄の可能性」をツイット。

これは、「日本が攻撃されれば米国は第三次世界大戦を戦う。・・・でも我々が攻撃されても日本は我々を助ける必要はない。彼らができることは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」から、そんな「不平等」な日米安保は破棄するぞ! という脅しだ。

トランプの本音は、「米国が攻撃されれば日本は第三次世界大戦を戦う」そんな日米安保に変えるべきだ、ということだ。

事実、直後の大阪G20記者会見では、「破棄ではなく日米安保の改訂」だとその真意を明確にした。

それは自衛隊が専守防衛に徹することとして、相手国への攻撃を禁じている「戦争放棄」の憲法九条に対する「改憲」要求に他ならない。

この米トランプの要求受け入れは、すでに安倍政権下で着々と進行している。

昨年、採択された新「防衛大綱」では、小型空母や射程900km巡航ミサイルの保有ほか装備面において自衛隊が「敵基地攻撃(戦争)能力」を持つようにした。

いま国会において、安倍政権は「改憲」を自身の最大課題としている。

米トランプの「日米安保改訂」要求と安倍「改憲」とはしっかりとイコールで結ばれている。これは日本にとって、とても危険なことだ。

そしてさらに問題なのは、今国会においていま野党の誰も「改憲」を争点にしないことだ。安倍政権の「ヤルヤル詐欺にすぎない」とタカをくくっているからだろう。しかしいま、安倍「改憲」と闘わなければ、「米国が攻撃されれば日本は第三次世界大戦を戦う」、そんな日本に変えられることを放置することになるだろう。

後悔、先に立たず!-トランプや安倍をぜったいに甘く見てはならないと思う。

アジアにどう対していくか

赤木志郎 2019年10月20日

平和と繁栄、友好の東北アジア新時代に向かっている今日、東北アジア共同体、東アジア共同体を築いていくのは、時間の問題だ。このとき、東北アジア、東アジアとひとつに繋がるための考え方、理念が問われると思う。

ヨーロッパの場合、不戦の考え方から出発して一つの共同体(EU)を作った。類似した文化、宗教、発展水準などが一つの共同体を作っていける条件となった。しかし、EUは今や、崩壊の道を歩んでいる。それは各国の主権を制限し、その上にEUを作ったからではないかと思う。

アジアは宗教と文化、歴史と制度、経済発展水準、大国と小国など多様な地域だ。またアジアは侵略を受けた国々が多い。したがって、多様性を認め、各国の主権尊重、内政不干渉が重要な考え方だと思う。ASEANが成功しているのも主権尊重と内政不干渉に徹しているからだ。それは、各国が他国の上に立つことなく、互いに尊重する、この共同体内の国になっているからだといえるのではないか。

かつて日本が開国し世界に目を向けたとき、はじめてアジアの一員であることを自覚した。そのとき「アジアは一つ」(岡倉天心)という欧米に対抗するアジア主義がうまれた。アジア主義といっても後で、そう呼ぶだけで、岡倉天心の思想はスケールが大きく漠然としていた。頭山満などがアジア主義を掲げたが、日本が中国などの革命を助けていく上からの立場だったのではないかと思う。

アジアの外からアジアに対するのか、アジアの一員として内から対していくかで根本的に異なってくる。脱亜入欧は前者の考え方であり、アジア諸国にたいする蔑視と侵略を正当化した。脱亜入欧の日本支配階級は、それまでアジア民族運動に冷淡だったにもかかわらず、アジア主義に着目し、欧米に対抗するために日本を盟主とする大東亜共栄圏をつくるべきとする理念、「大アジア主義」を提唱するようになった。日本をアジアの盟主とする大アジア主義は、アジア諸国の反抗を引き起こし、失敗した。日本がアジアの外からアジア諸国の上に君臨しようとしたからである。

アジアの内の日本という考え方であってはじめて、アジア諸国との真の連帯と友好を強めることができ、アジアの発展に寄与しえると思う。

それゆえ、脱亜入欧、大アジア主義を批判的に反省、総括することが、アジア諸国の連帯と友好を強める共通した理念、東アジア共同体を基礎づける考え方を作っていくための必要な作業となる。また、EUが各国の主権を制限した問題点と教訓、ASEANの内政不干渉と各国の主権を尊重した経験を生かすことだ。

その理念を発見する過程は、アジアの中で日本がどういう役割を果たしていくかを見いだしていく過程でもあり、アジアの外から見るアジア蔑視、欧米崇拝主義との訣別を意味していると思う。そして、その作業のうえに、日本自身が自己のアイデンティティを発見することができると思う。

アジアの内の日本の会の研究課題として、アジアの真の連帯と友好を実現する理念をアジアの内からアジアに対する立場で少しでも深めていきたいと思っている。

「アジアの声に耳を傾ける」ことから

魚本公博 2019年10月20日

旭日旗問題が東京オリンピック・パラリンピックでも浮上している。

この問題は、2017年サッカーのアジア・チャンピオンズリーグの川崎フロンターレと韓国水原三星戦が韓国で行われた際、試合会場にフロンターレのサポーターが旭日旗を持ち込んだことから大きくなったもの。

この時、旭日旗を持ち込んだ川崎の一部サポーターの意識は「韓国やっつけろ」であり、それを過去日本が朝鮮を侵略し植民地支配し「やっつけた」ことになぞらえたものであることは確かであろう。これに韓国の観客が気分を害し韓国側が抗議したのも当然である。アジアサッカー連盟も「人種や政治的な信条などによる差別を禁ずる」という規定への違反として無観客試合や罰金を命じ、フロンターレも謝罪を表明している。

問題がこうなっているにもかかわらず、JOCは9月、旭日旗持ち込みは「制限しない」との見解を発表。これに反発した韓国側は、国会で「東京五輪旭日旗搬入禁止措置要求決議案」を棄権3の賛成多数で可決した。IOCは「競技場がいかなる政治的主張の場所になってはならない」として「大会期間に問題が発生した場合、個別に判断して対応する」としている。

今は体育競技の場での使用問題であるが、旭日旗問題は、もっと根が深い。すなわち、旭日旗は旧日本軍の軍旗(連隊旗)、軍艦旗に使われたものでナチスドイツのハーケンクロイツ(カギ十字)と同様の侵略(ファシズム、軍国主義)の象徴であり、それを今だに使用している(海上自衛隊の軍艦旗など)ことは問題ではないかということである。

そして、それは韓国だけでなく過去、日本の侵略を受けた中国やアジア諸国も同じような見解を表明している、まさに「アジアの声」だということだ。

率直に言って、我々日本人が旭日旗について、そこまで深く考えてこなかったのは事実ではないだろうか。何故、我々は、考えなかったのか? そういう教育を受けてこなかったから? 今でも使用するのは何故?

おそらく、アジアの日本への視線の中には、旭日旗問題だけでなく、我々日本人が気づかなかった多くの問題があると思う。それに耳を傾け、間違いは間違いとして正していく。それが日本のためにもなる。そうした時代なのだと思う。

ますます英語一強時代?

森 順子 2019年10月20日

初等教育からの英語の必修化は「英語とプログラム言語を覚えたら世界で通用する」という英語力強化の教育改革です。そのために英語だけの専門教員がいるくらいです。

社会を担う次世代を育むためにも語学は必修であり国際語である英語はもちろんのこと。ですが、英語教育に比べ国語教育がおろそかにされているのが問題ではないかと思います。読解力も弱く試験問題が理解できない、また読書しない傾向、読んでいる本もライトノベルのようなものと言われているのは、国語力が落ちているからだと思います。

人間にとって大切なのは思考すること。それは日本語という言語を扱う国語教育で養われます。その国語教育が貧困であれば母国語である日本語力も次第に衰え、日本人である意識も今後、変化していくかもしれません。

どれだけ時間とお金をかけて英語を勉強しても、日本人は日本語で考え話す以上のことを英語で話すことはできないのです。大事なのは、私たち日本人が英語で何を話すかということだと思います。そして「何を話すか」は、結局、母国語である日本語でなされるものだからです。

新しい令和の時代、日本人としての教養を育み日本のための人材育成は、英語教育だけでなく、むしろ国語教育の必要性が、今以上に問われていると思います。

安倍政権の全世代型社会保障制度改革のごまかし-国民に責任をおしつけ、国は責任の放棄-

若林佐喜子 2019年10月20日

安倍首相は、先の臨時国会・所信表明演説において、全世代型社会保障制度改革を再度強調しました。安倍政権の全世代型社会保障制度(改革)とは、どのようなものなのでしょうか?

少子高齢化を国難とする安倍政権。少子高齢化によって、支える側は減少するばかり、一方で高齢者は増え、社会保障費は膨らみ続ける。そこで、全世代で「支え合う」社会保障制度ということです。

具体的には、財源確保は、「みなで支える」消費増税の実施。年金問題と関連しては、「年金のみで老後生活は無理。自分で頑張れるところは頑張り、みなで支えましょう」と、70歳までの就業機会確保。併せて、年金給付開始年齢を現在の65歳から70歳に。

これは、社会保障制度に国が責任を持つのではなく、責任を国民に押し付けているに他なりません。

社会保障制度の改革は、どこまでも人々の生活の拠り所である国が責任をもつ方向で押し進められるべきだと思います。

「れいわ 新選組」は、国の責任、政治の責任を問う、としながら消費税の廃止を訴え、財源はお金のあるところからと法人税、所得税の累進課税を要求。賃上げと正社員化を進め、年金の支えてを強くするなどの対策を提示しています。

国民に責任を押し付けるのではなく、国が責任をもつ社会保障制度改革を!

「議々論々」コーナーを「アジアの内の日本」コーナーに変えるにあたって

アジアの内の日本の会 2019年10月20日

私たちは来年、よど号ハイジャック闘争五十周年という節目の年を迎えます。

「よど号」で渡朝以降の五十年は、身は朝鮮の地にあっても心は常に日本にあり、自分たちが日本のために何ができるかを考え、実践してきた歳月だったとも言えると思います。

いま世界は激動の時代、大きな転換の時を迎えています。特に東北アジア、朝鮮半島では大きな地殻変動が起きつつあります。しかしながら南北朝鮮、朝米、朝中、朝ロがこの新しい事態解決に積極的に動く中にあって、ひとりわが国、日本だけが「蚊帳の外」状態を脱することができずにいるというのが胸痛い現実です。

それは明治国家の「脱亜入欧」以降、戦後七十余年を経た今日もなお、わが国が「アジアの外」にあるということを示しているのではないでしょうか。

このような新しい事態を前にして私たちは、アジアの内から「アジアの内の日本」を考え発信する必要を痛感しています。

それゆえ私たちは「アジアの内の日本の会」を結成し、会の発信の場として当サイトの「議々論々」コーナーを新たに「アジアの内の日本」コーナーに変えることにしました。

「アジアの内の日本」コーナーが私たちの一方的な発信の場ではなく、日本で生活される皆様との意見交流の場となるよう皆様方のご協力を切にお願いする次第です。