よど号LIFE 2019年11月号

「皆が求めるもの」

小西隆裕 2019年11月20日

朝ドラを観ていたら、火鉢への絵付けのデザインづくりという初めての課題に緊張する主人公、喜美ちゃんにイッセイ尾形扮する師匠が言っていた。

「何も難しく考えることはない。皆がいいというもの、皆から求められるものをつくればいいんや」と。

なるほど。絵付けも、噺も、政治も、皆、極意は同じだということだ。

「どうしたら皆がいいというもの、皆から求められるものをつくれるか、やれるか」。

そこにすべての極意があり、基準がある。

人間誰しも自分中心になりがちな中、それが肝要。

難問にぶつかるたびに立ち返るべき、基本中の基本だと思う。

リヴァプールの「イジメ ダメ ゼッタイ」サッカーに勝利を!

若林盛亮 2019年11月20日

昨季2018-19欧州プロリーグ・チャンピオンに輝いたリヴァプールは、今季、11勝1分け、無敗で英プレミア・リーグ首位独走態勢に入りつつある。長年の熱狂的サポーターには最高のシーズン。

リヴァプールは現代サッカーの革命児! わくわくするサッカーでサポーターを魅了してやまない。

現代サッカーは長年、スペイン式のポゼッション・サッカーの支配下にあった。世界的名手、メッシ所属のバルセロナ(スペインの名門クラブ)に代表されるボール保持率を高め試合を一方的に支配するサッカーだ。

それを可能にできるのは、世界最高の選手を買い集めることのできる金満クラブ。英プレミア・リーグなら中東王族の石油マネーがふんだんのマンチェスター・シティ、ここ二年、英プレミアでリーグ制覇(優勝)を続けている。

ボールさばきに長けた高価なサッカー職人たちが自分たちだけでボールを支配し、じわじわ敵陣に迫る、そしてボールを左右、中央に振り分けながら時間と共に精神肉体的に疲労の出てくる敵の守備のほころびをついてシュートを決める。じわじわと弱者の首を絞めていく、いわばイジメのサッカーだ。

そんなサッカーに私は辟易としていた。

そんなサッカー界に革命を起こしたのが、四年前、監督に就任したドイツ人、ユルゲン・クロップが築き上げたリヴァプールのストーミング・サッカーだ。クロップはそんなサッカーで香川慎二のいた頃のドイツ・ドルトムンドを欧州王者に育て上げた実績を持つ。

ストーミング、すなわち混沌をつくりだすサッカー、ボール保持にこだわらず、むしろボールを失ったときこそチャンスととらえるサッカーだ。相手にボールが移った瞬間は双方とも混沌状態、この混沌を自分が支配しチャンスに換える、いわば「隙」を支配するというサッカー哲学に基づく。ボールを奪取した相手が攻撃に転じる時に生じる「隙」、前がかりになろうとする際に生じる敵の守備のわずかなほころびをチャンスに換えるサッカー、敵守備が整う前の素早い攻撃で一瞬にゴールを陥れるスピード・サッカーだ。

このサッカーは「組織された混沌」と言われるように、相手に渡ったボールを瞬時に奪還し攻撃に転じること、あたかも獣の群が獲物を襲うような組織的動きが不可欠だ。極論すれば90分間、走り続ける体力、そのハードな組織的動きをチーム全員が約束事に従ってできるチーム力なしにこのサッカーはできない。

昨季からはポゼッション=ボール保持も取り入れつつストーミングを基本にする、選手の体力消耗を避け、うまく試合を支配しながら「組織された混沌」をつくりだす術も身につけた。それがリヴァプールを欧州チャンピオンの高みに押し上げた。

今季は英プレミア制覇が目標、マンチェスター・シティの退屈な「イジメのサッカー」を王座から引き降ろすべき年だ。

格闘技サッカー本来の醍醐味があり、見ていてわくわくするサッカーが現代サッカーの主流になるべきだと思う。

独ドラマ「バビロン・ベルリン」

赤木志郎 2019年11月20日

BS衛星放送でドラマをみている。以前は韓ドラだったが、今は中国ドラマや独ドラマだ。とくに、その中で第一次大戦後のワイマール体制の崩壊期を描いた独ドラマが興味深い。

第一次大戦直後、独ではワイマール共和制となった。議会制の基盤がない矛盾にみちた社会のもとで共産主義運動が強いのに対しヒットラーのナチスが台頭していく。その渦中でワイマール共和制の政府のもとでの一刑事(風紀課所属)が共産党にたいする警察の暴虐な弾圧や秘密裏の国防軍再建の動き、トロツキー派にたいするソ連の動きなど、さまざまな事件に関わっていく。失業者が多く貧しく生きるのに精一杯な庶民たち、腐敗した上層部、社会主義運動にたいする軍部・右翼の憎悪など、当時の状況がリアルでわかる。物語はソ連からの反革命派の金塊を積んだ列車をめぐって展開される。だから、胸をドキドキさせながら見ている。

ヨーロッパの歴史の厚み、第一次大戦後の独がおかれた過酷な状況、社会民主党と共産党の確執、さらには今や独ではほとんど社会主義運動、労働運動について聞かれないことなど、いろんな疑問や考えが浮かんでくる。国の秩序を許せないという軍部と、それはブルジョア政治の擁護だとして革命を追求する社会主義勢力との対立で社会主義勢力が敗北したこと、今日、独で自国第一主義を掲げる「独のための選択肢」が台頭しているのを見ても、社会主義勢力がつまづいた原因には国家の大切さについての理解がなかったからではないかと思う。

「戦争だけはしたくない」という思いこそ

魚本公博 2019年11月20日

朝ドラの「スカーレット」、いよいよ主人公が女性陶芸家の道に進む佳境に入り、俄然面白くなりました。

その契機になった絵付け師・深野先生との出会いが印象的。戦争中、従軍画家として戦地に送られた彼。「ワシは美しいもの皆が喜ぶものを描きたかったんや、弾丸飛び交う戦場にそんなものあるかい」。そして終戦。戦争のトラウマから、「もう二度と描けん」と失意のどん底にあった彼の信楽焼との巡り会い。そこには、火鉢という日常品に美しくも人々の心を和ませる絵が。「こんなことができるんや」。そして彼は再び筆をとる。

その思いを自身のものとして受けとめ弟子入りを決意した主人公。地獄のような戦争を体験した日本人がそれぞれの生活者として持った実感。「もう二度と戦争だけはしたくない」との思いは、如何なる政治的言辞よりも重い。

その思いを代々受け継いできた日本人。「戦争だけはしたくない」、それは戦後日本人のアイデンティティだったのだと思う。そして今、そうした体験をした人たちも少なくなったと見透かしたかのような改憲策動が。しかし、「二度と戦争などしてはならない」という日本人のアイデンティティは、そんなヤワなものではない。ドラマを見ながら、そうした思いを強く抱きました。今後の展開が楽しみです。

「NO DEMOCRACY」

森 順子 2019年11月20日

これは、90年代に人気を博したGLEYの新アルバムの題目だ。そう、GLEYは、とってもカッコイイバンドだったと20数年前が思い浮かびます。そういう彼らが今、「伝えなければいけないんだ」という想いで創ったアルバムだという。

平成から令和、何か新しい時代の幕開けだと報じてマスコミなどでは素晴らしい未来の代名詞でもあるかのように令和という元号を使ったが、彼らはそのように感じていないようだ。戦争への反省を呼びかけ、社会の弱者排除を批判している「元号」という曲の歌詞はとても考えさせられた。彼らの真意が伝わってくるようだ。

「かつて俺たちは人生の舵を預けていました/放棄していました/誰も 誰かの人としてあるべき尊厳を/奪えはしないのだ新しい元号の下で」

日本に恋したゴッホ-「たゆたえども沈まず」

若林盛亮 2019年11月5日

BS放映の「日本に恋したゴッホ」を見た。ゴッホを描いた小説「たゆたえども沈まず」の原田マハがガイド、ゴッホの足跡をたどる旅人は「せごどん」で凛とした篤姫を演じた北川景子さんという組み合わせがとてもグッド。

原田マハ曰く「ゴッホは炎の画家とか言われてますが、晩年(自殺前)は追いつめられて最も辛い時期、この時期に後世に輝く素晴らしい絵を描いた」とか。

ゴッホはパリで接した日本の浮世絵に感動、その明るい色彩や大胆な構図に影響を受け画風を変えた、でも彼の絵は一枚も売れなかった。

あなた方のような清廉潔白で、親切でやさしい日本人に囲まれて

私はもう一度、この人生をやり直せる

そうだ、私はいっそ日本人になってもいい

(「たゆたえども沈まず」が語らせるゴッホの言葉)

失意のゴッホは、この日本への想いを実現しようとパリを離れ陽光さんさんたるアルル地方に移り、友人の画家、ゴーギャンと芸術家の共同理想郷を築こうとするもケンカ別れ同然の結末になって自分の耳をナイフで切り落とす事件まで起こす。孤独の内に精神に異常を来したゴッホは自ら精神病院に入院、鉄窓越しに見える風景を描き続けたという。

晩年の遺作は、地表に露出した大木の根だけを大きく描いた画、大地にしっかり根を張る姿に何を託したのか? 画家(自分)は死んでもその作品は永遠に残る、そしていつかそれが人々の評価を受けることをゴッホは信じたとも言われている。

そんなゴッホと彼の絵を「わけもなく大好き」という北川恵子さん。

私にもとても感情移入できた画家だった。中学時代に姉と見た映画「炎の画家」に感動して京都美術館までゴッホの絵を見に行って会場で買ったゴッホ画集、あのぐにゃぐにゃ糸杉などを真似たことも・・・。

大地にしっかり根を張る生命力・・・画家は死んでも作品は永遠不滅。

「たゆたえども沈まず」-とてもいい言葉だと思う。

独特な風味の雑穀ご飯

赤木志郎 2019年11月5日

そろそろ冬到来。例年11月は若干暖かさがぶり返した後、12月に入るや一気に氷点下10度以下の冬に入ります。そうした中、よど農園も仕事納め。今は、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモなどの最後の収穫。「食欲の秋」の代表格、芋類は、蒸かして、焼いて、炒めて美味しく食べています。市場でも安価で大量に出回っていますが、取りたてて直ぐの美味さは格別です。

そして、今年最後の種撒きは、ホウレンソウ。ホウレンソウは寒さに強く、極寒の零下十数度でも枯れることなく冬季の貴重な青野菜。ネギも強い。真冬には上部は枯れますが根は死なず、掘り起こして食べられますし、春には真っ先に芽生えてきます。

最後は畝起こし。冬前に耕しておけば害虫の卵なども死に、土も軟らかくなるということで、朝鮮では欠かせない農作業。来年春の農作業開始を思いながらの畝起こしは、しんどいけれども爽快です。

今年、最後の畑仕事

魚本公博 2019年11月5日

そろそろ冬到来。例年11月は若干暖かさがぶり返した後、12月に入るや一気に氷点下10度以下の冬に入ります。そうした中、よど農園も仕事納め。今は、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモなどの最後の収穫。「食欲の秋」の代表格、芋類は、蒸かして、焼いて、炒めて美味しく食べています。市場でも安価で大量に出回っていますが、取りたてて直ぐの美味さは格別です。

そして、今年最後の種撒きは、ホウレンソウ。ホウレンソウは寒さに強く、極寒の零下十数度でも枯れることなく冬季の貴重な青野菜。ネギも強い。真冬には上部は枯れますが根は死なず、掘り起こして食べられますし、春には真っ先に芽生えてきます。

最後は畝起こし。冬前に耕しておけば害虫の卵なども死に、土も軟らかくなるということで、朝鮮では欠かせない農作業。来年春の農作業開始を思いながらの畝起こしは、しんどいけれども爽快です。

そろばんの利用?

若林佐喜子 2019年11月5日

最近、よく行く商店でそろばん(朝鮮語ではチュサン=珠算)が販売されているのを発見。先日は、そろばんを手にした親子連れの姿も見かけました。

朝鮮では、2012年に情報産業時代に即した12年制義務教育の法令採択が発表され、「科学技術重視、人材重視」が社会的雰囲気になりました。一方で詰め込みや暗記式でなく考えさせる教育方法が強調されるようにもなっています。教員大学の最新の教育機材を用いての授業の様子や教員の再教育、新しい教授方法を学び合う様子がテレビでよく紹介されたりします。それに、田舎道でも電動自転車に乗りながらスマホを利用する姿が日常化しているこの頃のピョンヤン。

それで、そろばんを目にしたとき、「ええ! そろばん?」と、ちょっと意外で驚きでした。

案内人のキムさんに聞いたら、幼稚園から学ぶようになったそうです。情報産業時代、デジタル時代でも、数の概念、時間の概念などはやはり、実物、直感教育が必要だし、そろばんは知能教育、脳の活性化に良いらしい。

そう言えば、もう半世紀前の小学生時代、そろばん塾が流行り、学校には時計や数珠だまの大きな模型があったのを懐かしく思いだしました。スマホ、デジタル社会の今の日本で、子供たちはどんな風にして学んでいるのだろう? と考えたりする11月です。