よど号LIFE 2020年11月号

「ムネリン」

小西隆裕 2020年11月20日

先日、BS1のスポーツ番組、「ワースポ」を観ていたら、スペシャルゲストに「ムネリン」こと、川崎宗則、39歳のプロ野球選手(と言ってもその経歴は半端ではない。日本のパリーグ・ソフトバンクから始まって、米大リーグ・マリナーズなど数球団、ソフトバンク復帰、台湾リーグ、そして今年から日本のBCリーグ・栃木と渡り歩いてきた球団は、国境を何度も超えている)が登場した。

その解説が、破格のおもしろさだった。

自分の人生を評して、自分でも呆れるほど「クビ」になった人生だとしながら、「クビ」を新たな「挑戦」と捉えて、少しも恥ずかしいと思ったり、悲観したりしていない。

だから、今度のパリーグ、クライマックスシリーズで決定的な初戦を落とし、後がなくなったロッテに対しても、「これがチャンスだ。破れかぶれで底力を出せばいい」と助言する。

普通一般に「禍を福に転じる」「ピンチをチャンスに」と言うが、彼の場合、普通じゃない。その権化なのだ。

だからこそなのだろう。彼の解説は、人に優しい。後で気づいたのだが、失敗した選手に対しても、その選手を責めることは決してない。彼のダッシュは素晴らしい。だけど跳ねたボールの方向が変わったので・・・式に、理解の幅と深度が並でないと思った。

ロシア映画「T-34」

赤木志郎 2020年11月20日

日本でロシア映画「T-34」の人気があるという。捕虜となった戦車兵たちが戦車を修理し、一台でドイツ軍を撃退しながら目的地に向かうというストーリーだ。私も見た映画だ。

ロシア映画にたいする人気が高まったのは、ソ独戦争に関する新書版の本が出版されたこともあって、ナチス・ドイツにたいする戦いはソ連赤軍が主だったことが理解されるようになったこともあるという。実際、米軍はノルマンジー上陸作戦くらいで、ドイツ主力軍を打ち破り、ベルリンを解放したのはソ連赤軍だった。

 朝鮮ではソ連映画、ロシア映画がよくテレビで放映さる。ソ連の時から映画製作の伝統があり、その水準が高いので朝鮮でも人気がある。今週は「狙撃手―報復武器」(4部作)と「星」が放映された。いずれもソ独戦争の映画だ。「星」は小説が有名になり映画化され、日本でも公開されたロシア映画の秀作だ。ロシア映画にはソ独戦争を題材にした映画が非常に多い。

ソ独戦争はロシアでは「大祖国戦争」と呼ばれる。国土がじゅうりんされ、レーニングラードとスターリングラードで激戦が繰り広げられ、首都モスクワまでドイツ軍が迫った。戦争で亡くなった人は国民の10人の内1人にあたる2千400万人だ。国と民族の存亡をかけたもっとも壮絶な戦いだったといえる。だから、毎年、戦勝記念日に盛大な祝典が開催されている。そのためソ独戦争で祖国を守り抜いた体験がロシア人のアイデンティティとなっているのではないだろうか。

ロシア映画を見て、祖国を守る戦いで発揮された愛国心が今なお人々の心に訴えているのはそれが誰もがもっている感情からだと、いつも思うのである。

小説「出星前夜」を読んで

魚本公博 2020年11月20日

11月はこれまで例年よりも7、8度高い暖かい日が続きましたが、今日いきなり最低気温が0度に、いよいよ冬到来です。「読書の秋」も終わりですが、この間、就寝前の読書で飯嶋和一さんが08年に発表した島原の乱を扱った小説、「出星前夜」を読みました。

松倉藩の圧政の中、3万もの農民が原城に立て籠もり、10数万の幕府方の大軍を相手に4か月もの籠城戦の末、皆殺しにされた事件。

飯嶋さんは、その過程を豊富な資料を駆使し一人一人の人物に焦点を当てて記述。その一人一人の生き様が胸を打ちます。それを、ああだこうだと解説するのは「不遜」の極み。ここは、文庫本末尾にある星野博美さん(写真家、ノンフィクション作家)の「解説」を。「4カ月もの籠城の末なぶり殺されていった無名の人間。そこにまちうけているものが破滅だとわかっていても、守らなければならない矜持、破滅を身近に感じるからこそ、せめて尊厳ある死を選ぼうとする最後の矜持・・・原城跡でむごたらしく殺されていった無辜の民と、現代を生きる私たちは、いまもか細い糸で結ばれている」と。

私たち日本人はそういう歴史を持っている。その血が私たち自身の中に「か細く」であれ流れている。以前、BS放送の旅番組で原城跡の風景が出てくるものがありましたが、城跡を見上げながら案内者のタレントが「怨念がこもったような気を感じますね」と言っていた場面を思い出しました。

この小説は、悪政の中、疫病が発生し、子供たちが次々に死んでいく中、立ち上がる混血児・寿安が一つの主人公になっているのですが。疫病が悪政を暴き、人々が立ち上がるという構図はコロナ禍の今も同じかもしれません。それを言えば、まさに「不遜」の極みなのですが・・・そう思います。

11月に思うこと

森順子 2020年11月20日

労働党創建75周年行事を終え80日戦闘に入った朝鮮です。ちょうど一ヶ月少し経ちましたが台風被害の復旧建設と生産向上のための昼夜を問わない戦闘が行われ、各単位の成果をテレビでは毎日伝えています。すでに5つ以上の里や郡の住居が完成し多くの世帯が入居しました。あと一ヶ月の80日戦闘、全国を上げての気勢は、ひたすら総邁進です!

村の管理のおじさんたちも日曜日も仕事をしています。そんな姿をみるにつれ、休みなのにと思いながら、やっぱり刺激を受けます。

私たちの方は、今年は渡朝50周年ですが昨年から考えてきた企画も、このコロナで少し諦めかけていたのですが、それでも今月7日に、コロナで70人限定の会場に80人という盛況のなかでイベントを開くことができ心からうれしく思っています。コロナが猛威を振るうなか、来てくださった方々に感謝です。

あの時代に闘争した方は、まだまだ元気、これからだという気概がある世代なのだと改めて感じながら、私たちも共にという気持ちをいっそう強くしました。

73歳の血たぎらせるリヴァプール&南野君の「試練突破戦」!

若林盛亮 2020年11月5日

老人になれば枯れる、というのはウソだ。

同窓を見ても、昨年までトライアスロンやフルマラソン、ロードバイクをやっていた友、最近、若い頃の仲間とバンド再結成した友などなど、いまどきの老人はとても枯山水の心境にはならないようだ。

“生涯現役yobo_yodo”の私だが、オフタイム最大の関心事はサッカー、英プレミア・リーグの古豪リヴァプール「命」人間だ。死ぬまでに一度は聖地アンフィールドのホームスタジアムでKOPと呼ばれる筋金入りサポーターらとスタンドを揺るがす応援歌“You’ll never walk alone”(君は独りじゃない)を歌ってみたい、こんな叶わぬ夢を見ている。アホやなあと笑ってやってください、それは私への激励・・・

2018-2019シーズンUEFA-CL(欧州チャンピオンズ・リーグ)優勝を果たしたリヴァプールだが、翌年には英プレミア2019-2020シーズン優勝によって30年ぶりの悲願を実現した。ドイツ人名監督クロップが4年の歳月をかけて築き上げたいまや「世界最強」のチームだ。サラー、マネ、フィルミーノの最強3トップによる超攻撃サッカー、それにプラス鉄壁の防御陣を備えたことで不敗神話を誇るチームになった。

ところが突然の不運がチームを襲った。「世界最高のCB(中央防御手)」と言われたファンダイクが相手キーパーの悪質なタックルを受け膝十字じん帯損傷、今季の復帰は絶望的となった。ファンダイク加入で鉄壁の防御陣が完成、これが不敗神話の源泉だったが、それが根元から揺らぐ事態にチームは直面している。

しかしどんな試練であろうとも乗り越えるのが真に強い者、こういうときこそ選手と監督、経営陣が一体となったチームの総合力、自力更生力が試される。

大黒柱不在直後のUEFA-CL一次予選、対アヤックス(オランダ)戦では苦戦したが、後半60分、「世界最強」3トップを下げフレッシュな南野拓実など前線3枚の大胆な交代策でゲームを押し返し1:0で競り勝った。クロップ監督は「死に物狂いで守り、常に攻撃に顔を出した」南野拓実を“マシーン”と称賛した。

まだリーグ始まったばかりの今季、長期にわたる「試練突破戦」覚悟の年になるだろう。しかし希望もある。控えの続いた南野君だが、今はチームも認める「戦力」に成長、この試練は日本サッカー再生一番星・南野君にとってはチャンス到来かもしれない。リヴァプールが本物の「世界最強」となる今季の闘いでぜひチームの要となる活躍を見せてほしい。

苦難にめげず英プレミアとUEFA-CL両制覇まっしぐらのリヴァプール&南野君、その「試練突破戦」に血たぎらせる73歳、とても枯れてる暇はない!

買いました、食べました、美味かった

魚本公博 2020年11月5日

買いました。マグロ! 市場の魚売り場の一角に黒光りするマグロ、前から興味あったのですが、大きいし値も張りそうなので敬遠していたもの。値段を聞くと5万ウォン(500円)ほどとのことで、朝鮮の物価からすれば、かなり値が張るのですが、食欲の秋で、体力回復に務めている私。思い切って買いました。

マグロと言っても小型。多分、メバチだと思います。カチカチに冷凍されていたので、見るだけはよく分からなかったのですが、解凍すると新鮮さに欠ける。それでもマグロはマグロ、朝鮮ではなかなか手に入らないもので、早速、にぎり寿司、鉄火丼と土日の自炊時はマグロづくしでした。

朝鮮でもあちこちに寿司店もあって、マグロの寿司も食べられるのですが、大きな寿司飯に薄いマグロ身が乗ってる感じで、まあまあといったところでした。それで今回自分で作るものは、少しの酢飯に分厚く切ったマグロを乗せて・・・。その美味さ、これまで朝鮮で食べた、どのマグロ寿司より美味かったです。

この美味さをみんなにもと思ったのですが、シャリがもう一つ旨くできない。それで刺身にして食堂での食事に出しました。皆よろこんで、鉄火丼にしたりして食べながら、マグロ談義に花が咲いたひとときとなりました。

防疫先進国に思う

若林佐喜子 2020年11月5日

今年も余すところ2ケ月、コロナで始まりコロナで暮れそうな1年です。

朝鮮では、10・10(党創建75周年)行事での、若き指導者の「一人の悪性ウイルス被害者もなく、みなが健康であってくれて本当にコマッスミダ」のことばに、誰もが涙を流しました。コロナ禍にともなう2月からの国境封鎖、豪雨被害と台風被害は五〇年朝鮮に滞在する私たちも初めての体験でした。

コロナ禍対策と言えば、2月の初期段階での国境封鎖、外国人の入国禁止措置は今も続いています。国の安全、人民の生命と健康の為といっても、これまでの経済制裁プラス最小限の物資しか入ってこないということですから、経済の自力自強、国産化が問われるということです。大変なことだ、凄いことだと表現するしかできません。

さらに、地球温暖化現象、気候変動による7月からの豪雨被害と台風被害。特に台風10号は、観測史上最大と言われ、日本の方々からも心配メールを頂き、私達も大変緊張したことが昨日のように思い出されます。

今は、80日間戦闘の真っ最中です。ピョンヤンの中核党員師団や軍隊、全国からの支援による被災地の住宅建設が完成し、入居式のニュースが連日放映されています。喜びにわく現地の人々の姿は視聴者まで元気にしてくれます。被災後、倒れた稲を起こし、栄養肥料の噴霧器隊を組織するなどして、農業生産を多収穫で応えようとした農場員たちの汗と努力も「実り秋」で結束。

特にコロナ禍対策では、コロナ封じ込めに成功している台湾や韓国、中国、ベトナムなどアジアの国々が防疫先進国と評価を受け、経済も回復、成長に転換していると言われています。

そのような中で、やはり思いは祖国日本へです。菅首相の所信表明演説には、「自己責任内閣」と「野次」が飛び、競争、経済効率第一は時代遅れだという指摘もでているとのこと・・。本当にそう思います。国難の最中、国の舵取りという重い責任を担っていると言いながら、結語で「まず自助努力でやってみる、最後に政府の安全網でお守りします」と言われても、多くの国民は倒れてしまいます。すでに、日本の感染者数は中国を越えて10万人超に。日本政府は、防疫後進国、補償後進国との評価を免れないのではないでしょうか。経済再開もコロナ禍対策をしっかりやり抜いてこそ、うまくいくという思いを一層強くする11月です。