10回目の訪朝(2017.11.20~25)

「よど号“ヨーロッパ拉致”逮捕状の撤回を求める会」事務局 I
訪朝は10回となった。今年3月の訪朝は「えん罪・欧州拉致」発刊(社会評論社)の最終打ち合わせのため、今回は帰国した女性(たち)の旅券再発給の新たな闘いの準備のためである。

「欧州拉致・でっち上げ逮捕状撤回」を求めた国賠裁判では「欧州拉致」疑惑の「真相究明」は一定の前進のあったものの、期待していた朝鮮政府の「特別調査委員会」の解体もあり「全容解明」には至らなかった。解体から2年経過したが、このまま座して待つわけにはいかない。新たに旅券再発給の闘いを行うことになった。この闘いを通して、「日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがある」との再発給の拒否理由は漠然としたもので根拠のないものであることを明らかにし、よど号の「欧州拉致」の逮捕状の撤回を求める闘いを前進させ「帰国問題」に結着をつけていきたい。

もうひとつ、平壌・かりの会が運営するウェブサイトの打ち合わせも行った。日本国内の支援者の協力を得て、ウェブサイト名「ようこそ よど号日本人村」の開設、11月末には立ち上げるにことになった(祝 11月29日開設)。

訪朝団は、山中氏のほか編集者の椎野氏、関西からはアクセス数上位の社会運動情報・阪神ブログ運営する古賀氏と労働運動や辺野古で闘うM氏、そして筆者を入れて5人のメンバー。会議では活発な議論が交わされた。M氏のみ朝鮮ははじめて、山中氏は70回前後、ほかは7~14回のリピーターである。

〇経済制裁下の平壌の印象
2017年11月21日~25日、経済制裁下の平壌に滞在した。制裁は本当に効いているのかどうか世界が注目している。短い期間であったが、直接、見る機会が訪れた。筆者は出口戦略のない制裁は意味がないし朝鮮の「自強力第一主義」(自力更生、国産化など)を侮るべきではないという見解である。トランプの「軍事オプションを含むあらゆる選択肢」を100%支持するという安倍(政権)は、朝鮮危機を「国難」とし「祖国防衛主義」を扇り、これを「大政翼賛会的」報道が後押し、この国を「戦争をする国」へと舵を切ろうとしている。この国の危うさ、安倍(政権)の朝鮮敵視政策を批判すべきと考えている。今回で訪朝は10回になるが、”身体(からだ)”で感じることも重要なことだ。TVにでる朝鮮コメンテイタ―たちは、そのほとんどが朝鮮に行ったことがないひとたちだ。情けない。朝鮮は162か国と国交がある。国交のない日・米・韓は少数派だ。反覇権主義、民族自決を掲げる非同盟諸国(運動)がある。朝鮮はアメリカ主導の世界秩序に不満のある非同盟諸国とは伝統的な連携があり、非同盟諸国は国連加盟国の三分の二を占める多数派である。日米韓主導の一連の制裁は「北朝鮮は国際的に孤立している」かのように見えるが、実態を必ずしも反映していないといえよう。

〇旅券再発給の闘いとは
旅券再発給の闘いの議論が活発に行われた。「国境」問題は1970年代の一国革命主義を否定し「国際主義」が跋扈した時代、当時、「査証(ビザ)」という雑誌も出版され如何に国境を越えた闘いをしていくかが、もてはやされた。よど号ハイジャックもこの流れのなかにあったといってよい。T子氏は国境を越え、いくつかのハードルを越えながら平壌に到着し小西隆裕氏と結婚、平壌で生活をするようになる。20代の「青春」時期である。ハイジャックから47年経過した。T子氏は日本に帰国したものの、現在も日本国の国境を超えることができない状態が続いている。外務省は「『著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者』に該当する」、つまり「危険人物」の烙印を押されているのだ。これから、新たに日本国の国境を超える闘い、旅券発給拒否に対する闘いをはじめる。あらたな「青春」(老春)のはじまりでもある。そして、あらためて、この古くて新しい、この「国境」問題に真正面から取り組んでいくことになる。闘いは、他の発給拒否事件(ジャーナリストなど)とも連動しつつ、日本国(外務省)の姿勢、背景にある朝鮮敵視政策を批判していくことになる。国賠ではよど号グループのヨーロッパ活動実態など詳細に明らかに「えん罪」を訴えた。国賠は事実審理に入ることなく「敗訴」、しかし一定の世論喚起にもなった。この旅券問題を通してさらに世論喚起を行い「帰国問題」(「欧州拉致」逮捕状の撤回)を前進させていきたい。

T子氏は平成24年10月26日、旅券発給申請を行ったが、発給が拒否された。以下の理由からだ。
いわゆる日本人拉致事件に関与したとして国際手配中の者を含む,いわゆる『よど号』ハイジャック事件の実行犯及びその妻からなる集団と密接なる関係を維持していることが認められる。かかる事情及びこれまでの国内外における行動等に鑑み,旅券法第1 3 条第1項第7号に定める『著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者』に該当する。

年内には旅券再発給の申請を行う予定である。申請書と同時に「旅券申請事情説明書」(行政書士N氏に依頼。以下「説明書」と略す)と添付書類(本2冊ほか平壌の隆裕氏の陳述書など)提出する。「説明書」では上記拒否理由への全面的反論を行っている。以下は骨子である。①申請を必要とする理由②申請人の日本帰国後の生活について③過去の発給拒否の事由と旅券法④拒否理由の不当性⑤拉致事件への関与を否定する国家賠償請求訴訟を提起⑥『よど号』ハイジャック事件の実行犯及びその妻からなる集団と密接なる関係について⑦貴殿(申請人)のこれまでの国内以外における行動等について⑧結語

年内に旅券申請し、発給を拒否された場合、行政不服審査法に基づき不服申立を行うか、損賠に持ち込むか、同時に行うか、今後検討していく。

〇平壌観光と乗馬に初挑戦
会議の合間を縫って楽しみにしている平壌市内の食事と観光へ。まずは玉流館の冷めん。直前に何かの大会に全国から大勢の人々のための祝宴がもたれていたため、その影響でかなりの混雑。一旦は断られたが案内役の「交渉」でナンバーワン冷めんを満喫。三池淵(サムジヨン)楽団も鑑賞した。「我らは万里馬騎手」など社会主義の前進と速度を鼓舞する朝鮮の楽曲が多い印象であった。

3月訪朝の際は、朝鮮式銭湯(風呂、食事、マッサージなど日本のスーパー銭湯とほぼ同じ)の三か所をハシゴしたが、今回もお風呂と朝鮮式アカスリへ。頭のてっぺんからつま先までの朝鮮式アカスリのリピーターになったようだ。おススメだ。

最終日には乗馬に初挑戦。競馬場内にある美林乗馬クラブ(室内)へ。よど号がハイジャック後、はじめて朝鮮の大地に降り立った美林飛行場、その敷地内につくられたらしい。インストラクターの指導のもと、手綱で馬をコントロール、速歩の手前(けり)までできるようになった。馬の敏感さをはじめて知ったが、ここまでできるようになるとは。「筋がいいですね」(女性指導員)。感激であった。案内人によれば朝鮮でも競馬があるが、「当たり馬券」は賞金ではなく商品が提供されるという。機会があれば、よど号因縁の隣の飛行場で前回訪朝の際、天候のため中止になった軽飛行機に再挑戦したいものだ。

はじめて参加のM氏はビジターのほとんどが行く迫力のある祖国解放戦争勝利記念館、何回みても飽きない万景台学生少年宮殿、朝鮮の科学技術の歴史と体験コーナーもある科学技術殿堂などを見学。その反応は如何?おおいに関心がある。(おわり)