【今月の視点】トランプ一般教書演説で描かれた「新しい夢」

小西隆裕

去る1月30日、米大統領トランプによる一般教書演説が行われた。約1時間半の演説の印象は、大方の見るところ、「丸くなった」「融和的」「フラット」などといったものだった。昨年、大統領就任時、その施政方針演説が「尖っていた」「対決的」などといった印象で山があったのと比べ対照的だった。

なぜそうなったのか?その原因については、バノンがいなくなった、等々、いろいろ言われている。

しかし、その基本は、はっきりしている。トランプ路線、「アメリカ・ファースト」覇権路線の破綻だ。この演説に先だつこと数日、トランプは、TPPなど自らが否定したはずのグローバル路線への復帰を示唆している。「丸くなった」のも、「融和的」になったのも、自らの主張、路線が破綻したからに他ならない。

今回の「演説」で強調された「新しいアメリカ」、そこに何の新しさも、新しい夢も語られなかったこと、米外交路線上敵視された中国やロシアが「ライバル」に格上げされたこと、「ならず者国家」朝鮮への攻撃が常軌を逸して長時間に及んだこと、これらすべてが示すトランプ・ファースト覇権、そして米覇権そのものの脆弱化と崩壊にこそ、歴史の新時代、脱覇権新時代への「新しい夢」が描き出されているのではないだろうか。