私のお気に入り、牛肉の刺身

魚本公博

朝日新聞で5月22日から30日まで7回にわたって「生で食べる をたどって」というシリーズ記事があり、面白く読みました。とくに食事でも保守的な英国で、「レア バーガー」(中は生)やタルタルステーキなど牛肉の生食が流行っているということで興味を引かれました。

というのは、私は牛肉の刺身が大好き。私が、牛肉の刺身に「ハマッた」原点は、「クジラの刺身」。子供の頃は、廉価で貴重なタンパク源として10㌢立法ほどの固まりで売られており、これを刺身にすると実に絶品。あの美味がなつかしく、その代用として始めたのが牛肉の刺身でした。

実は、同じような思い出から、牛肉の刺身にハマッていたのが、亡くなった田中。同じ九州出身で(彼は熊本、私は大分)、「クジラの刺身」の話や牛肉の筋の取り方、殺菌の仕方など意見交換し盛り上がったものです。

牛の生肉といえば、朝鮮では「ユッケ」が有名ですが、これは砂糖で甘みを付け、ゴマ油を絡めて食べるもの。これも美味いのですが、日本人の私としては、純生をワサビと醤油で食べる刺身式が格段に美味いです。

朝日新聞のシリーズでは、最後(7回目)に、「日本はことのほか『生』を重んじる」として、文化人類学者の石毛直道(80歳)さんの「料理しないことが料理の理想というパラドキシカル(逆説的)な料理」という言葉を紹介していました。そして、日本では、「生」を食べるために生産から流通まで独特のシステムを発達させてきたのだと(その代表例である「築地」などの魚市場のシステムは是非守って欲しいですね)。

朝鮮では、豚肉が基本で、牛肉は、以前は外国人用のドルショップで「輸入物」しか売ってなく高価(キロ当たり14$)だったのですが、最近は国内産が出回り一般食料店でも売られており、これだとキロ当たり5~8$ほどです。その中でも私のお気に入りは、ミョンギという産地名のついた「ミョンギ コギ(肉)」。赤身だけの固まりで売られており、刺身に最適です。

今、元山・カルマ観光街が建設されていますが、元山の近くには最近建設された「セポ大牧場」があります。「セポ コギ」が観光街の「売り」になり、そのうち一般にも出回るのではないかと期待しています。