【今月の視点】「朝米」合意のキーワード、「新時代」

小西隆裕

朝米首脳会談まであと一週間。これまで敵対を続けてきた両国の史上初の首脳会談。それが簡単に行くはずがない。それも、「非核化」という双方の利害が真っ向からぶつかる大問題を抱えている。

案の定、「会談」を間近に控え、「非核化」をめぐる攻防が表面化した。トランプ一流のディール(取り引き)外交。「会談」の「中止」をめぐる朝米双方のやり取りを見て、「やっぱり」と悲喜こもごもが世界を駆けめぐった。

しかし、これも案の定、一騒動を乗り越え、「会談」はなんとか実現の運びとなるようだ。ニューヨークとワシントン、板門店、シンガポールでと繰り広げられる「会談」の準備は、そのことを物語っている。

そこで大方の識者、評論家たちが問題にする論点は、もっぱら「非核化」の方法をめぐってのものだ。CVID(完全、検証可能、不可逆的)か、それとも段階的、同歩的か、見返りはどうするか。9000人から15000人に上る関連科学者、技術者はどうするのか。設計図は?彼らの身に付いた知識、技術、技能は?議論百出だ。

だが、ここで忘れてはならないのは、朝鮮が全土を米国によって占領、支配された敗戦国ではないということだ。議論の荒唐無稽は歴然としている。

では、「会談」の合意、成立の鍵はどこにあるか。それは、「新時代」だ。ここにこそ、双方の利害が合致する合意点がある。

「冷戦」が終結して、30年近く。この間世界を支配してきたグローバリズムの時代も破綻した。もはや戦争と敵対で覇権を維持できる時代は終わっている。今、全世界で切実に求められているのは、平和と友好だ。

アジアと世界のこの切実な要求、それに応えることこそが戦争と敵対の「象徴」だった朝米関係改善に求められている。「非核化」への要求もそのために他ならない。

戦争と敵対の旧時代から平和と友好の新時代へ。「非核化」、戦争終結、国交正常化に向けての「会談」成否の鍵は、まさに朝米双方がこの「新時代」にそれぞれの思いを託し利害を託すところにこそあるのではないだろうか。