魚本公博
1月8日の朝日新聞の記事に、「法改正 漁業者の知らぬ間に」という題目で、安倍政権下で各種法案が強硬採決されることが常態化していることを批判する記事が載っていた。
その一つ、漁業法改正。1947年に制定された旧漁業法は、戦後民主改革の一環として、漁民達に漁業協同組合を結成させ、この漁協に漁業権を優先的に与えるということを骨子としていた。改正漁業法は、この規定を廃止し民間企業の参入を後押しするというもの。
記事は、香川県阪出市の与島漁協がこの動きを危惧して9月に文書で内容説明を求めたが、なしのつぶて。そして11月6日に閣議決定し、1週間後に国会提出、審議は衆参両院1ヶ月たらずで成立させている。そうした経緯をもって彼らの「だましうちのようなやり方。民主主義ではない」との声を紹介しながら、それ以前の経緯も説明。
それによれば、17年秋には、政府の規制改革推進会議の論議の中で、漁業でも民間企業を参入させる新自由主義的な改正案がすでにできていたという。
これに私が説明を加えれば、2013年4月、麻生財務相が米国ワシントンでの講演で「日本の水道は全て国営もしくは市営、町営で、こういったものを全て民営化します」と発言しているということ。「こういったもの全て」を民営化するという中に漁業(漁業権)も入る。そして民営化の相手は米国企業であり、それは久しい以前から約束したものなのだということだ。
こうした経緯を見れば、これが米国金融・企業からの要求であることは明らかである。先ず、米国金融。企業の要求があり、安倍政権は、それに応じて、地方自治体や農協、漁協などが管理権をもつ分野を米国の外資・企業に「売却します」と約束したのであり、その約束を果たすためには、「だましうちのようなやり方」「民主主義でない」ことが常態化してしまうことは、当然のことなのだ。
そして、そうであるが故に、こうした法改正の理由は、「結論ありき」の口実づくり、へりくつ、ウソでしかない。漁業法改正では、「人口減の中、このままでは日本漁業は衰退するだけであり、民間活力を導入しなければならない」と理由付けするが、それは全くのウソであり口実にすぎない。実際、漁業では、与島漁協の人が言うように「瀬戸内海は古くから漁民が漁業を効率的に沿岸漁業や養殖で高い漁獲を保ってきた」のが事実。
このウソの論法、「人口減でこのままではやって行けない」という論法が全てに適応される。水道、農業(種子)、医療、教育、地方公共事業、保健、雇用(移民政策)などでも。こうして地方・地域そのものが、そして国全体が米国に売り飛ばされる。
「日本を取り戻す」を売り物にした安倍政権の真の姿。こんな売国政権を続けさせることはできない。今年は統一地方選、参院選があり、衆参同時選挙なども取り沙汰されている。事の本質は、米国に従い、そのためには日本の全てを売ってしまうことをはばからない、その対米従属性にある。安倍政権を辞めさせて作る新しい政権は、日本と日本国民の生活を守る、そうした自尊自主の政権でなければならないということだ。