なぜ、安倍政権は朝鮮敵視がだれよりもひどいのか?

赤木志郎

朝米首脳者会談決定により、一番、惨めだったのは安倍首相である。

100%トランプ大統領と一致した同盟関係を築いていたはずだったが、南北首脳者会談決定、朝米首脳者会談決定の一連の動きからつんぼ桟敷に置かれた。そうなった理由にはいろいろ考えられる。

しかし、そもそも、朝鮮の核・ミサイル問題は本質上、朝米関係の問題であって、日朝関係の問題ではないということがあるだろう。つまり、日本ははじめから当事者ではなかった。日本はアメリカの制裁と圧力政策に利用されただけだということだ。

核・ミサイル問題は日朝問題ではなく朝米問題なのに、安倍首相は国連総会での演説で朝鮮非難をおこない、日米韓の同盟強化を云々し、欧州、アフリカ、中近東諸国を回って援助とひきかえに朝鮮への制裁強化を訴えてきた。アメリカの忠実な番犬の役割を果たしてきたといえる。

南北朝鮮の統一促進、朝米関係の正常化が実現されれば、朝鮮の核・ミサイルの脅威を口実にした改憲や新防衛大綱など安倍首相の目論見がその根拠を失う。今回、トランプ大統領の朝米首脳者会談開催に向けた動きで、安倍首相がもっとも打撃を受けたといえよう。

打撃を受けたのは安倍首相だけであり、国連事務総長、EU諸国、ロシアと中国など世界のほとんどの国が、首脳者会談開催の動きを歓迎している。核戦争の危険性がなくなるのだから当然のことだ。世界の首班のなかでただ一人、歓迎できず打撃を受けるということ自体、なんとも異常なことだ。

なぜ安倍首相が世界中の誰よりも朝鮮に対する制裁を叫び、対話に反対してきたのだろうか? それほど朝鮮を敵視する理由はなんだろうか? 制裁と圧力の行き着く先は戦争しかなく、戦争になれば真っ先に被害を蒙るのは日本であるのに・・・。

もちろん、安倍首相がアメリカの言いなりになる対米追随分子、親米分子だからだといえる。しかし、それだけではないらしい。安倍首相の心の中に朝鮮を憎悪してやまない動機があるのではないか。そうでなければ説明がつかないほど、安倍首相は世界の誰よりも強く朝鮮にたいする制裁を叫び続けてきた。

その第一の動機は、アジア侵略を反省せず、どこまでも侵略しようとしているからではないか。

安倍首相は満州国を運営した祖父岸信介を尊敬してやまないように、アジア侵略をまったく悪いと思っていない。

戦後70周年談話の際でも、侵略の反省を明らかにした村山談話を否定しようとしていたことにも表れている。その侵略の矛先は日本にとってはまず朝鮮だ。韓国を含め朝鮮半島における主権を認めず、蔑視してやまないのが、安倍首相だ。

第二の動機は、覇権国に屈従した人間が、覇権に刃向かう国にはその分だけ一層敵意をもつからではないか。

誰でも他人に屈服したくないものだ。しかし、日本は戦後一貫して、米軍の占領状態におかれてきた。形だけの独立、主権にすぎない。アメリカに従属してしか生きられないのが日本の支配層だ。その典型が安倍首相だと思う。とくに安倍首相は第一次政権のときにアメリカに梯子をはずされた体験までもっている。

そのように屈従して生きている者が、自分の生きる道としてアメリカの朝鮮敵視政策に親分以上に率先し制裁を叫び、憎悪していく気持ちになるのは分かるような気がする。

とくに安倍首相は軍国主義者としてアメリカにいつか刃向かわないかと警戒されている。疑われれば一巻の終わりだ。疑われないようにさらに必死にアメリカの覇権のお先棒をかつぐ。

安倍首相さん、アメリカの覇権が崩壊する時代、そろそろ年貢の納めどきにきたのではないですか。