プロは違う

小西隆裕

昨夏、眼下に大きく横たわる大同江を見下ろしながら、話が出た。冬にはあそこに氷が張る。昔は、厚さ数十センチ。そこでよくスケートをやったものだ。トラクターが渡れる年もあったくらいだ。

それを聞いていた写真作家、H氏の目が輝いた。次のトップページの写真は、それでいきましょう。大同江の真ん中、氷上から日本人村を撮るのです。

さすがはプロ。同じ話をしていても、考えることが違う。それを聞く私たちの目にも、情景が浮かんだ。

だが、ちょっと待て。近年は、地球温暖化のせいか、氷が薄くなっている。トラクターどころか、スケートをやる子どもの姿もまれだ。代わりに薄い氷に穴をあけての釣り人の姿が増えている。

で、折角の「名案」も話半分。浮かんだ情景にももやがかかってきた。少なくとも、私の頭の中ではそうだった。

だが、プロは違う。一旦描いた夢は簡単には諦めない。冬が近づくにつれて、矢の催促が降ってきた。氷上撮影はどうなったのか。「大同江」は忘れたのか。

それで、いろいろと重い腰を上げ、ビザ申請したのが一月末。それから一ヶ月、二月末の大同江やいかに。われら六人にH氏、その重みに氷は耐えられるか。

だが、案ずるより産むは易し。当日早朝、折しも上がる太陽とともに、大同江の氷は私たち皆を広々と広がる岩盤よろしく大きく暖かく迎えてくれた。

新年、われらがサイトのトップを飾る一葉の写真にまつわる「秘話」の一席。自然現象まで味方につける。やはりプロは違う。