【今月の視点②】「非核化」のための唯一の道

小西隆裕

「南北」「朝米」の首脳会談が近づいてきた。

そこでは、南北朝鮮の和解と協力、朝鮮と米国間の和平と国交の成就が話し合われる。ただしそれには、「非核化」問題の解決が条件だ。これなしに、二つの「会談」の結実はあり得ない。

だが、それが簡単ではない。「非核化」について、朝米の間に食い違いが甚だしい。

まず、何の「非核化」かが違っている。「朝鮮半島の」か、「北朝鮮の」かだ。それにともなって、その方法も違って来る。「段階的、同歩的」か、「完全、かつ検証可能、不可逆的」かだ。

前者は、中国やロシア、後者は米国や日本によって提唱されている。そして、南北朝鮮は、ともに、この問題への言及は避けている。

これをめぐって、今、諸説紛々だ。人によっては、これを指して、「水と油」「解決不能」と言いながら、朝米首脳会談の破綻、戦争の勃発まで騒ぎ立てている。

だが、果たしてそうなるだろうか?今、広く世界を見渡して、まず見えてくるのは、この問題で孤立している米国や日本の姿だ。

誰も、「北朝鮮」だけが非核化しなければならないとは思わない。また、その方法を段階的、同歩的にやるというのも当然のことだ。そして、そうすることと「完全かつ検証可能、不可逆的」は決して矛盾しない。

問題は、中国やロシアが提唱している「案」を米国が受け入れるかどうか、そのように提起されている。その上で、答ははっきりしているのではないか。受け入れるしかない。

米国があくまで自分の「案」にしがみつき、朝米会談を破綻させたりしたらどうなるか。生まれるのは、すっかり権威を失った米国の孤立だけだ。そうした米国が朝鮮に「制裁」や「圧力」をかけ続けるのはもはや不可能だ。

米国が孤立を免れる道は一つしかない。それは、中国やロシア、いや大多数の国々が支持する「案」を受け入れて、対朝鮮敵視から友好へ転じる道だ。その場合、「南北」の和解と協力に米国が「理解」を示すしかないのは言うまでもない。

来るべき「南北」「朝米」の首脳会談は、東北アジアに巨大な地殻変動を引き起こす画期的なものになるのが予想される。それに日本がどう対するか、それが問われていると思う。