「子ども食堂」が問いかけるものは?

森 順子

地域の子どもに無料か安価で食事を提供する「子ども食堂」が全国に2286ケ所もあることがわかり、認知度が上がっています。

2年前は319ケ所、ここ2年弱で7倍以上増え、今や年間100万人以上の子どもが利用していることになります。年間100万人以上の子どもが食事をとっていることになれば、「子ども食堂」は、もう、子ども達の暮らしのひとつの基盤になっているといえます。

そして、地域交流の場、子どもの見守りの場としての環境も生まれやすくしているし、支え合い頼り合う地域づくりに重要な役割をしています。

単純に考えてのことですが、2年間でこんなに拡大する企業とか団体とかはあるのでしょうか? 

どこからもお金は出てこない、寄付や会費での運営、持ち出しで運営しているところも少なくない。そんな中でも、やむにやまれる気持ちで始めた方々、このような人々の自発的な取り組みとして広がっていったことを知ると心打たれるものがあります。

しかし一方で、「子ども食堂」のこれほどの広がりは、何を意味しているのかです。

生活はますます厳しくなり、子どもの貧困の問題も極めて深刻になっているということは容易に推測でき、それは社会の格差拡大が急激に広がっているということを示しているではないでしょうか。

さらにこの格差が深まれば社会はどうなるのでしょう。日本財団の推計によると、子どもの貧困を放置した場合、最も控えめな推計でも約2.9兆円の経済損失が生じるそうです。

すなわち、子どもの貧困を放置し経済状況による格差の解消をやらねば、その当事者だけでなく税や社会保障の負担増によって社会全体に甚大な影響があることがわかっています。

結局は、子どもたちが将来住み、生きていくことになる地域や社会のあり方、社会の形はどうあるのがいいのかということに行きつきます。

全国の「子ども食堂」が、子どもたちをはじめ地域の人々と社会ために貢献していることに感謝し、「子ども食堂」が、日本の社会と政治に訴えているものは、次のいい社会はどんな社会なのかを社会全体で真剣に考えていくことが、とても大事なことだと思います。