新たな時代感覚のキャッチ

森順子

私たちに送られてきた資料のなかに、BBC放送では、「韓半島(朝鮮半島)の歴史で途方もない瞬間」という速報を流し、他にも「類例がない場面」「歴史的な場面」という言葉が次々と登場し、世界に起こるはずのないことが起きた、というような報道です。

誰も想像も予想もできなかった事変だったから本当にその通りです。当事者である南北朝鮮の人々、多くの海外同胞でさえ、厳しい歴史と困難な政治状況の中で、ここまで至ることを想像していたでしょうか。

世界の人々は、分断と対決の朝鮮半島、もっと言えば、制度の対立が絶対化された現実に、このような変化が起こると考えたでしょうか。

何だかんだ言っても、小国の運命は、結局、強大国に左右されるしかない、だから世界は分断、対立し紛争が起こるが仕方がないという意識、とくに朝鮮半島問題においては、アメリカに勝てるはずがない、こういう意識がけっこう根深くあったのではないでしょうか。

ところが、このような意識にもとづいていた時代感覚は、一瞬にして吹っ飛んでいきました。それは、金正恩委員長が軍事境界線を超えられ両首脳が出会った瞬間、新しい歴史を作った歴史的な場面と皆が観たからです。

もはや世界は強大国の意思や圧力で動く時代は終わり、平和と繁栄の新たな世界への希望を全世界の人々が描いた、そのような場面だったのではないでしょうか。

まさに、「時代は変わったのだ」という新たな時代感覚を人々が瞬時にキャッチした出来事だったからこそ、板門店での南北首脳の出会いに、世界中が感動し拍手を送ったのだと思います。

領土の大小はあっても国の高低はないといわれるように、国同士が認めあい尊重し対等な関係を築いていく時代です。

朝鮮半島問題においても朝鮮の平和と繁栄、統一の主体は、南北朝鮮なのですから、南北朝鮮の平和と繁栄のために南と北が力を合わせようとする努力を誰も反対できるはずはなく、それを邪魔する論理はもう通用しません。

南北首脳会談は、世界の分断と対決の壁を突き破る新たな時代の出発点となるでしょう。