夢のような光景

森順子

朝鮮の人々の半世紀にわたる苦痛の象徴である板門店での南北首脳会談、この歴史的な出会いに胸をときめかせたのは、やはり朝鮮の人々です。

「胸がふるえて涙が止まらなかったわ」「境界線を超えられたときはマンセーマンセー(万歳)を大声で叫んだわよ」と、すごく興奮して話す管理のおばさん。

同族を引き裂き肉親をも引き離した分断の地、板門店、ここでの南北首脳の出会いは、朝鮮の人にとって万感の思いでしょう。おばさんの歓喜と涙にそんな思いがこめられているのを感じました。

私にとっては・・・。すべてを統一のためにささげ活動していた彼ら彼女たち、在日という境遇に誇りをもち生活難をも乗り越え強く生きていた多くの彼ら、タバコ代をためて統一のために少しでも何かをしたいと言っていたおじさん、そして、帰りたい帰りたいと言って死んでいった父。40数年前のそんな人たちの面影が脳裏に浮かんだ日でした。

朝鮮民族の自負を守りながらあんなに苦しみ苦労していた彼らは、夢のような光景をどんな思いでみつめていたのだろう。そう思うと胸が熱くなりました。