小西隆裕
今回の「南北」、そして「朝米」和解への動きを指して、「冷戦」の終結に例える向きがある。実際、「38度線(軍事境界線)」は、「ベルリンの壁」と同様、「冷戦」の産物だと言うことができる。だから、今生まれている朝鮮戦争終結、平和協定締結への動きを「冷戦」の終結と呼んでも間違いではないだろう。
だが、朝鮮半島の南北を分ける「38度線」「軍事境界線」とドイツを東西に分けた「ベルリンの壁」、この両者の崩壊の間には決定的な違いがあると思う。その一つは、よく言われるように、後者の統一が「西」への「東」の「吸収統一」だったのに対し、もし前者の統一が実現するとすれば、それはどちらかのどちらかへの「吸収統一」にはならないということだ。
しかし、違いはそれだけではない。もう一つより本質的な違いがあるのではないかと思う。それは、前者が社会主義と資本主義、両体制間の戦いである「冷戦」の終結と言うよりは、この65年間、その終結が宣言されず先延ばしにされてきた朝鮮戦争という米覇権と朝鮮民族間の戦いに最終的決着をつけるという側面が強いものであり、それ自体、米覇権からの朝鮮民族全体の解放につながるものであるところにあるのではないだろうか。
歴史的な朝米首脳会談を二十数日後に控えて、「38度線」と「ベルリンの壁」の違いがどこにあるか、その正確な認識が問われていると思う。