開かれた東北アジア共同体建設の道

赤木志郎

史上はじめての朝米首脳会談により、新しい朝米関係の確立と朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築が開始された。

それは、同時に、東北アジア共同体形成にとって決定的な意義をもつものだと言える。なぜなら、これまで朝米が敵対的関係であり朝鮮半島は軍事分界線をはさみ常に戦争勃発の危険性をはらんでいたゆえ、東北アジア共同体を築こうとしても不可能だったからだ。敵対から友好への朝米関係と南北朝鮮の平和と融和は、東北アジア共同体建設への道を開いたといえる。

これまで東北アジア共同体を築く問題について1980年代から90年代にかけて論議され、日本政府も取り組んできた。そこでの問題は、日本がアジア諸国にたいする勢力圏を作るという発想の傾向があったことと、つねにアメリカの反対にあって東北アジア共同体構想が立ち消えになってきたことだ。2009年の鳩山政権の時もそうだった。

しかし、現在は環境が根本的に変化した。中国や南北朝鮮などの発展により日本のアジア勢力圏を作ることが不可能となる一方、アメリカも朝鮮半島の平和と繁栄を唱えているので東北アジア共同体建設に反対するのが難しくなったゆえ、各国の主権を尊重した基礎のうえで協力をはかる共同体建設の道が大きく開けたと思う。

すでに中国の「一路一帯」、ロシアの「ユーラシア共同体」があり、それらと連携しながら朝鮮半島を核とする東北アジア共同体が建設されれば、関係各国の発展と繁栄、地域の平和と安定に大きく寄与するということは間違いない。

日本は元来、東北アジア諸国の一員だから、当然、東北アジア共同体建設に積極的に関わっていかなければならない。東北アジア共同体建設は、日本にとっても平和の保障と経済的繁栄をもたらす大きな意義をもっている。それゆえ、日本が東北アジア共同体建設に積極的に参加することが問われてくる。

東北アジア共同体建設において日本と関係各国との間で解決すべき幾つかの問題がある。

その一つは、朝鮮民主主義人民共和国にたいする植民地支配の謝罪と賠償、および国交正常化だ。
二つは、アジア諸国にたいする侵略戦争の過ちにたいする反省と謝罪を明確にする問題。
三つは、竹島、尖閣列島などの国境紛争を平和的に話し合いにより解決していく問題。
四つは、ロシアとの平和条約を結び、北方諸島の返還を実現する問題だ。これは返還後、米軍基地を建設させないという保証があって実現しうるものだから、日本の任意の場所に米軍基地を建設できるという安保条約を改正、ないし制約することが要となる。

これら、戦後政治において大きな未解決の問題を、平和と友好、繁栄の東北アジア共同体を建設していく大きな理想を実現していくなかで円満に解決していくことができる。

朝鮮、中国、ロシアなどを敵視し、対抗していく時代は永遠に過ぎ去った。ともに手を携えウィンウィンで発展をとげていく時代が到来したと思う。