ドラマ「紅いコーリャン」

赤木志郎

今、朝鮮のTVで中国ドラマ「紅いコーリャン」が放映されている。土日2部ずつ放映し全部で60部ある。

鄭暁竜の小説が1987年に映画化され世界的にその名が知られた。舞台は、山東省の済南に近い高密県。主人公のクア(九児)は酒造家に嫁ぎながら、匪賊の頭との子供二人を生み育てる。県では県警備隊と二つの匪賊が勢力争いをしている。

そこに日本侵略軍が迫ってくる。クアは日本軍の離間策動を阻止し、反日部隊を支援していき、日本軍を誘引して壮烈な最期を遂げる。

ドラマは「人間として生きるとは」というテーマを自立心の高い主人公を通して追求していて、いわゆる抗日闘争ドラマではない。しかし、日本侵略軍が占領してくる時期だけに、抗日を離れての話の展開がありえない。

日本軍の支配のもとでの富裕層、学生、労働者、下女、老婆などさまざまな人々の葛藤をとおして、人間になることとは義理を重んじて生きることであり、国があってこそ家族もあるゆえ最終的には国のために皆で戦うことだということを、このドラマは教えている。抗日部隊の安全のために自ら犠牲になる県長やクアなどがその典型だ。

一方、胸痛いのは極悪非道の侵略者が日本人であることだ。「野村」という商人に扮装した特務が、侵攻にかんする調査をすすめ、手先を作って離間工作をおこなう。東北地方の状況や山東半島侵略の状況を見聞きした人は危機感を募らせているが、大半の民衆は日本人が無差別に中国人を殺すとはまだ想像もしていない時である。

金しか眼中にない者やよく状況が分かっていない者も利用される。県を占領した日本軍は350余名の村民虐殺を行う。朝鮮の映画「血の海」を彷彿させる。

人々を無差別に殺戮、略奪する侵略は許されないことだが、一つの民族を愛国者と売国者の二つに引き裂くということはもっと許されないことだと思う当然、家族も引き裂かれる。そして、売国者は憎悪を浴びる。

戦後の戦犯処理においてでも売国者がまっさきに処刑されていった。しかし、そのような売国者を作ったのは日本軍国主義者ではないか。

反日ドラマを見ると、日本軍国主義がいかに他民族を不幸と悲劇に陥れたかを否応なしに知ることになる。朝鮮、中国など東アジア諸国の抗日闘争の映画、ドラマを見ることは、日本という自分の国の姿がどうだったのか、アジア諸国の目を通して客観的に知るうえで重要なはずだ。