侵略と戦争で幾人、犠牲となったのか?

赤木志郎

東北アジア新時代に日本が合流していくためには、歴史認識の問題がある。アジア諸国は過去の侵略のことを忘れていない。この数年間でも、日本人と話したくないと会話を断る中国人や朝鮮人を私は目撃したことがある。東北アジアの新時代の到来で侵略と戦争の反省をどうするかがさらに迫られている。でなければ、信頼にもとづく友好関係を築くことができない。

半年前、吉田裕著「日本軍兵士」(中公新書)が出版され、兵士の目線で日本軍兵士の犠牲の実態がかなり分かるようになった。病死・餓死者が戦没者の半数以上占めること、自殺や「処置」という名の殺害も非常に多いこと、「万歳突撃」(アッツ島)や「自決強要」(沖縄戦など)もあり、艦船沈没による海没死者35万8千人、特攻死3848人などなど・・・。

とくに戦争末期、中国戦線、ビルマ戦線、太平洋の島々で餓死者、病死が戦死より大きく上まわっている。戦闘を行うというよりまるで兵士たちを餓死・病死に到らせるための作戦だったことに戦慄を覚える。

歴代自民党政府がこのような実態を自ら明らかにしてないということは、侵略と戦争を反省していないということを意味していると思う。もし、日本政府=自民党政権が先の戦争が過ちであったことを認めるならば、犠牲になった兵士、民間人のその実相を率先して調査、分析し、公開すべきだろう。

それにもまして、植民地国における虐殺、犠牲がまるで明らかにされていないことが問題だと思う。

別の朝鮮侵略史の本を読むと、次のように書かれてあった。30-40万人の農民が殺された甲午農民戦争にたいする干渉。日韓併合前後の1907年―1911年の義兵虐殺1万7597人。1919年3・1運動における検挙者2万6443人、虐殺5-10万人。1923年関東大震災での約6千600人の朝鮮人虐殺。満州(間島)における朝鮮人村落を血の海にし約4万人虐殺。1939年―45年で強制連行150万人。軍人・軍属として37万人。朝鮮内の強制労働動員が450万人。従軍慰安婦が数万人。

これらすべてが日本軍国主義による犠牲者だ。植民地支配による犠牲者は、戦争犠牲者の数字に含まれていない。日本軍兵士の犠牲より、植民地の民衆の犠牲がはるか多い。

侵略と戦争による日本の被害と加害の実態を明らかにしてこそ、侵略した側でもいかに民衆の損害が多いことか、それにもまして侵略された側の被害が大きいかを知ることができ、「二度と戦争をしない」覚悟と決意を不動のものにすることができると思う。