魚本公博
7月5日に発足した首相の諮問機関「地域制度調査会」。人口減による地方自治体の財政が逼迫する中で、これまでの自治体のあり方を見直し、制令指定都市や人口20万以上の中核市を中心にした「連携中核都市圏」(圏域)を形成し、圏域単位の地方自治に編成し直そうというらしい。
そのために、地方交付金も圏域を対象にする反面、小規模自治体への交付配分を調整し、これまでの「独自のまちづくりは」事実上、抑制する方針、なのだという。
かみ砕いて言えば、「連携中核都市」以外の市町村は、見放し・放棄してカネも出さないということ。こんな自治否定、住民無視がどこにあるのか。
全国市長会議などが「これまでの努力に水を差す」「中核都市周辺の小自治体は埋没する」などと猛反発するのも当然だ。首都圏大学教授の山下祐介氏なども「平成の大合併で自治体を減らし、インフラの選択と集中を進めたことが人口減や少子化が止まらなくなった原因ではないか」、それなのに、さらなる「選択と集中」を行えば、一体、地方はどうなるのかと批判している。
この山下教授は、「増田レポート」(増田寛也氏が日本創成会議のレポートとして提出した「地方消滅」)に異を唱えてきた人。そこで改めて氏の著書を見た。私が見たのは「地方消滅の罠」という本だが、その帯には「地方を消滅へと導こうとしているのは あなたたちではないか」とある。今回の「地制調」の発足と方針を見れば、山下氏の危惧は的中したと言える。
その上に前回、水道法改正で指摘した「コンセッション方式」導入。それは、水道事業の運営権を米国のベクテルなどに売却することを狙ったものであり、この方式は市町村単位で管理運営されている全ての分野(私が考えただけでも、道路、交通、体育・文化の公共設備、公園、ゴミ収集、公営住宅、山林、医療機関、教育機関、農業機関などなど)に及ぶことが予想される。
そうなれば、地方の運営権は外資・米国企業に握られ、地方は米国に牛耳られる。このように見れば、山下氏の問いかけは今では「地方を消滅へと導こうとしてきた あなたたちの狙いは地方を米国に売却することだったのか」というものになる。さらには、それによって「日本を米国に売るのか」というものにならなければならないだろう。
何のために? 米国覇権の転換。トランプ政権のアメリカ・ファーストのために各国の力を強引に組み込む。日本はそのモデルとして、日本を完全に米国の一部として組み込む。まさに日米同化。
従米政治のなれの果て、今日本はそういう岐路に立っていると思う。来年は統一地方選の年。市町村などの基礎自治体、そしてその全ての住民からの「NO突きつけ」。見捨てられ、米国に売却される者の怒りを突きつけなければならないと思う。