ニガウリ

魚本公博

今、よど号農園ではニガウリ(ゴーヤ)が大きくなっています。

この南方の作物が酷寒の朝鮮でも栽培されていることに気づいたのは、20ほど年前に熊本出身のTさんとマンギョンデ(万景台)の金日成主席の生家を訪れたとき、その垣根に這っているのを見て、「あれ、ニガウリじゃないの」と言われて。Tさんが「こんな寒いところにニガウリがあるなんて」と不思議がっていたので案内人に訊くと、これは主席のおじいさんが植えていたので今もそうしているとのこと。わが、よど号農園のニガウリは、そのとき種を分けてもらった、その子孫。

ニガウリ(ゴーヤ)と言えば沖縄、その作物が朝鮮に。一体どういう経路で入ったのか知るよしもありませんが。古くから沖縄と朝鮮は、独特の関係をもっていたようです。

それを表すのが琉球王国時代に首里城にあった「守礼之邦」の扁額が掲げられた守礼の門に書かれていたという、「日本とは瞳と瞼の関係、朝鮮とは唇と歯の関係云々(正確には忘れました)という文字」。当時、沖縄人は卓越した航海術を駆使し日本、朝鮮、中国、東南アジアで盛んな商業活動を展開していましたから、ニガウリもそうした経緯で入ってきたのかもしれません。

またこんな話しもあります。朝鮮の昔話し「ホンギルトン」。倭寇退治に功績をあげた主人公が王様から「褒美を与える、何でも言ってみよ」と言われ、両版(貴族)階級出身の恋人との結婚を許して欲しいと願い「それだけはできない」と言われ、二人は「身分差別のない所に行こう」と沖縄に船出します。

昔からの沖縄と朝鮮の意外な親近関係。一方、当時の日本と朝鮮との関係は主に倭寇の関係(豊臣秀吉の朝鮮侵略も朝鮮の人は最大の倭寇と見る)。最近の朝鮮半島の動き、その中で駐韓米軍の縮小・撤退の話が出ていることは沖縄の人々を勇気づけていますが、あくまでも朝鮮を敵視し辺野古新基地建設に固執する日本政府。

「繁栄と平和」の東北アジア新時代が言われる今、日本は倭寇思考で行くのか、守礼思考で行くのかが、問われているように思います。

ニガウリは故郷(大分県)でも栽培され、よく肉や魚と一緒に煮込んで食べたものです。そうした「ゴーヤ圏」の人間としては、おい東京よ、倭寇思考はやめろよな、やっぱ守礼(道義)思考で行こうぜと言いたくなります。