牛肉の煮汁(ソユッケジャン)

赤木志郎

私が朝鮮料理で一番、美味しいと思うのは、ソユッケジャン(牛肉煮汁)だ。自分でもよく作ったことがある。煮込めば煮込むほど美味しくなる。ハンガリー料理のグラーシュスープにも似ている。自分で作るのには時間がかかるのが問題だ。煮込みに2-3時間以上も必要だ。30分では味がしみ出ない。

スープは朝鮮料理に欠かせない。日本にいるとき、朝のみそ汁以外、スープを摂ったことがほとんど記憶していない。ところが、朝鮮料理にはスープと一緒にご飯を食べるのが定番だ。そのスープの代表がソユッケジャンだ。

庶民的なこの料理は、高級食堂で注文すると美味しくない時がある。長時間、煮込んでいないからだ。大きな鍋で長時間煮込み、いつでも出せるようにしている店は、庶民的な食堂だ。数多くある食堂から、美味しいソユッケジャンを出す店を探すのは大変だ。

長らく「テドンガン食堂」がそうした食堂だったが、料理士・従業員が代わってしまい、味も変わってしまった。そうして先日、数年ぶりで、偶然、美味しいソユッケジャンを出す食堂で見つけた。それに羊肉のシシカバブまであった。

朝鮮固有の代表的料理は、平壌冷麺とともにこのソユッケジャンだと思っている。