外国人労働者受け入れをめぐるその場しのぎ

赤木志郎

この間、外国人労働者受け入れをめぐって論議が交わされている。安倍政権は、「高度専門人材」に限っていた外国人就労資格を介護や建設、農業など14業種の単純労働において「特定技能1号」「2号」の在留資格を新設しもっと低賃金で雇える外国人労働者を増やそうと目論んでいる。

これにたいし立憲民主党は「これは移民政策ではないか」と問い詰めている。在留外国人はすでに256万になっており、交通機関が発達した今日永住資格をもっているかどうかで「移民」かどうか論議する意義を失っている。日本はすでに欧米並の移民国家となっている。在住外国人のいない地域を見つけるのが難しいくらいだ。単なる労働力としてのみ受け入れ、日本語教育、医療、子育て支援など人として暮らす体制を整えないのであれば、話にならない。しかし、安部政権は頑なに「移民ではない」と言い張っている。何が何でもまず労働力不足を外国人で解決しようという魂胆だ。

現在、31万人いる「留学生」の97%がアルバイトをしており、コンビニなどの仕事を担っている。約26万人の「技能実習生」も実態は低賃金労働者だ。この他、資格のない人や不法滞在の在住外国人で働いている人が多い。それでも少ないとして、新たに「特定技能労働者」の資格を新たに設け、介護など14業種で最大14万7千人の拡大を試算している。外国人労働者が昨年末の128万からさらに一挙に増加するのは確実だ。

周知のようにこの問題が提起される原因は、人口減による急激な労働人口の減少にある。今日の労働力不足は以前から指摘されていたのもかかわらず、何の対策もとられてこなかった。現在にいたっても、「あらゆる日本人にチャンスを創ることで、少子高齢化もきっと克服できる」(施政方針演説)として、老人、専業主婦、障害者も難病者など働ける者すべてを動員しようというもので、少子高齢化それ自体の解決をめざしていない。

学業のために来ている留学生にわざわざアルバイト可能としているのは、日本ぐらいだ。そのため、「留学」を口実に働きに来日する人が多い。「技能実習生」の本来の目的は日本で働きながら技能を身につける途上国への技術移転だ。しかし、実際には農業や漁業、建設など人手不足の現場で日本社会を支えている。福島原発の除染作業を強いられたベトナム人もいる。不法な待遇に抗し、逃亡した実習生が後を絶たない現状だ。

「特定技能1号」「2号」というのもその延長線上で低賃金雇用を大々的におこなうものだ。

留学、実習、特定技能という口実のもとで、低賃金という不正が罷り通る。しかも切羽詰ってから、その場その場のしのぎで法律・対策を立てている。

根本問題である少子化問題は先送りされたままで、では外国人労働者を移民として位置づけるのかという検討も何もない。

戦略なき政策の根本原因は、財界の言うがままに政治がおこなわれているからだ。

移民は本来、その外国人にとっても望むものではない。自分の国で働けるのが一番だ。移民を受け入れる国にとっても習慣の違いなど様々な問題が起こる。そのことは欧州の移民政策が行き詰まっていることを見ても明らかだ。多くの国で移民反対の声が高まっている。

その場しのぎの継ぎ足しで、根本問題を解決しないやり方は、結局、日本を滅ぼすことになるのではないだろうか。