F35B戦闘機+小型空母=「敵基地攻撃能力の保有」

若林盛亮

最近の「要注意」記事二つ。

その一つは安倍政権が、最新鋭ステルス(レーダー網にかからない)戦闘機F35B「ライトニングⅡ」を、米国から最大100機追加購入する検討に入ったと報じられたこと。

二つ目は、岩屋毅防衛相が11月27日の記者会見で、海上自衛隊のヘリコプター積載可能な「いずも」型護衛艦を空母化するよう改修し、短距離滑走での離陸と垂直着陸が可能なF35Bを運用することに前向きな姿勢を示したことだ。

この二つの記事の意味するものは何か?

それを解く鍵は、第3次政権発足に際し行った安倍首相の所信表明演説にある。

「年末に向け、防衛大綱の見直しも進めてまいります。専守防衛は当然の大前提としながら、従来の延長線上ではなく国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めてまいります」

要するに安倍首相の言いたいことは、「従来の延長線上ではない」防衛力のあるべき姿、すなわち日本の防衛力を「専守防衛の延長線上ではない」ものに変えようということだ。

垂直離着陸可能なステルス戦闘機F35Bの購入、それにプラスして海上自衛隊の護衛艦の小型空母への改造、その答えはこれまで専守防衛の自衛隊が保有できなかった「戦闘機積載空母」を保有するということだ。これまでの自衛隊は憲法9条の縛りを受け「専守防衛」に徹すること、したがって戦闘機積載の航空母艦のような攻撃力の保有はかなわなかった。ヘリコプター搭載可能な護衛艦(空母ではない)を改造した小型空母、その小型空母からでも離着陸可能な戦闘機としてステルス戦闘機F35から「垂直離着陸」式の「B型」が選ばれた。

自衛隊が「敵基地攻撃能力の保有」に一歩踏み込むということ、「専守防衛の見直し」を自衛隊の装備面から実体化していくものだ。

年末に決まる新防衛大綱には、朝米首脳会談後の和平への動きの中で「北朝鮮の核とミサイルの脅威」を煽っての「専守防衛の見直し」や「敵基地攻撃能力の保有」という文言を入れるのが困難になった。「新防衛大綱」に明記できないならば、装備面で実質的に「敵基地攻撃能力」となる護衛艦改造の小型空母建造、飛行甲板が狭くとも離着陸可能な垂直離着陸式の戦闘機購入、この二点セットの装備を新たな防衛力とする。

この「二点セット装備化」=「敵基地攻撃能力の保有」によって、こっそりと「専守防衛の見直し」は実体化され、その先行した現実を追認する形で9条改憲へと世論を誘導しようという安倍政権の魂胆がミエミエだ。

ステルス戦闘機F35B購入、あるいは小型空母建造の段階から「敵基地攻撃能力の保有」をめぐる議論として、この「二点セット装備化」問題を広く国民に問うていくべきだと思う。