羽織はかま姿の本庶佑さん

赤木志郎

免疫ガン治療薬を開発しノーベル賞を受けた本庶佑さんは、その授賞式に羽織はかま姿でのぞんだ。私には欧州貴族たちの前に現れた本庶さんの姿は、ひときわ輝いているようだった。

本庶さんは、免疫の力を使ってガンを治療するのにその薬を開発したところに特別な業績がある。偉業をなしとげた威厳ある男性の着物すがたは凛々しい。日本民族の民族衣装と言うべき、着物の価値を見直した。

着物といえば、私には甚ペイがあり、夏、それを着て過ごしているが、非常に居心地が良い。風通しがよく動きやすい。着物には日本人の知恵が凝縮されているという話をなにかの文章で読んだことがあり、もっと現代式に着やすくした和服が開発されていると聞いている。母が毎日、着物を縫う仕事をやっていたので、着物に違和感がなく、むしろもっと和装が身直されたらと思っていたくらいだ。

が、羽織はかまだけは威張るためのように感じで好きになれなかった。とくに、朝鮮や中国の抗日映画では、羽織はかま姿の日本人が軍国主義の象徴のように描かれていたので、とても羽織はかまが良いと思えなかった。そうでなくても、古い考え方をもつ老人の着るような印象があった。

ところが、本庶さんの羽織はかま姿を見て、これまでの見方が間違っていたと思った。着物もどんな人が身につけるかで違うということか、大事なのは人なのかもしれない。

本庶さんの場合は、とくに日本人としての誇りを世界に示している点でひときわ際だったといえる。それが煌びやかな欧州の礼服に囲まれながら目立った一番の理由だろう。