「西郷どん」

小西隆裕

大河ドラマ「西郷どん」が終わった。

毎年、大河ドラマは衛星テレビで観ているが、今年のは例年以上に何か惹きつけられるものがあった。それは、主役の鈴木亮平さんの魅力もあったが、何より、「西郷さん」への私の思いがあった。

「西郷さん」は、私の子どもの頃からの「英雄」だった。今回のドラマ視聴率が西高東低、3%ほどの差があったようだが、九州は福岡で小学生時代の大半を過ごしたことも影響しているのかも知れない。

その私にとって、朝鮮の地は、若干居心地が良くなかった。「西郷さん」が「征韓論」の張本人だったからだ。それで、私の「英雄」は、胸の内にしまわれてきた。

その「西郷さん」の「容疑」が私の胸の内で晴れたのは、かれこれ20年ほど前。晴らせてくれたのは、毛利敏彦さん。あの知る人ぞ知る「明治六年政変」(中公新書)の著者だ。

あの本で私は、「西郷さん」が朝鮮侵略を主張したのではないことを確信した。「西郷さん」は、朝鮮侵略ではなく、逆に朝鮮との友好を企図していたのだ。

そこから私の「英雄復権」が始まった。朝鮮にどう対するのか、友好か侵略か。あの時、それで日本の進路が決まった。欧米覇権に抗しアジアとともに進む日本になるのか、それとも「脱亜入欧」、アジア侵略の道に進むのか。「明治六年政変」はその分水嶺だった。

今回の「西郷どん」は、「西郷の道か、大久保の道か」ということで、その辺の事情を垣間見させてくれるものになっていた。

ドラマは終わったが、現実の日本の進路をめぐる闘いは、これから佳境に入って行くのではないか。

そうした中、歴史の真実がドラマや小説など様々な形で明らかにされて行くのは、大変有意義で嬉しいことだ。