自衛隊も無視する「防衛大綱」って何?

若林盛亮

前回は、堤未果さんの著書にならって「自衛隊が売られる」と書いたが、朝鮮から見える日本はいま、本当に危ない。新年はますますこれに拍車がかかると思うと、居ても立っても居られない。日本を遠く離れて「警鐘」を発することしかできないが、それでも何人かの人の目にとまるかもしれないと思って書き続けようと思う。

専門性の高い情報誌「選択」1月号にあった「自衛隊を弱体化させる安倍政権」という記事を見た。

その内容は、最近の傾向として米国から購入する正面装備に予算の大部分が使われるため、現場の人と装備の維持費に金が回ってこない、だから現場の自衛隊員たちが困っているという記事だ。

昨年2月の佐賀県柏崎市での住宅地区への自衛隊ヘリ墜落事故で2名の隊員が死亡、住宅にいた少女が負傷ですんだのは不幸中の幸いだった。事故の原因は、主回転翼の「メインローターヘッド」が中古部品の転用だったことにあった。問題はこれが偶然とは言えないことだ。自衛隊内では「いつかこうなる」とわかっていた必然の事故であることだ。予算が限られているため、ヘリコプター以外でも多くの部品が中古部品の転用で予算不足が補われているのが自衛隊現場の現実だった。

下士官不足も深刻とのこと、充足率は70%だという。「警察官の各種手当ての方が手厚い。われわれは三分の一程度でしょう」と陸曹長の一人が自嘲気味に語ったとある。

今回の新防衛大綱で「人と装備維持」の費用削減が更に増幅されるとのことだ。小型空母導入のため米国からF35Bステルス戦闘機を購入、900km射程の長距離巡航ミサイルや陸上からミサイル防衛のための「イージスアショア」等々、高価な兵器の米国からの購入が目白押しだ。その先には「防衛費の後年度負担」という名の「ローン地獄」が待っている、これはマスコミも指摘していることだ。

この「新防衛大綱」で自衛隊現場が必要とする予算はさらに削られ、現場が不満の温床になりかねない、これが「選択」誌の懸念だ。

しかも昨年末、閣議決定された「新防衛大綱」は、「党主導」と言われ、防衛省や自衛隊幹部の頭越しに決められたものだという、そのうえ自民党内の「国防族」といわれる人々の声さえ無視した、安倍首相の言いなりの小野寺前防衛相が中心となってまとめ上げたものと言われている。

さらに言えば、今回、新規購入の米国製戦闘機などは従来のように「組み立ては国内で」の慣例も破るもの、これは国内防衛産業をやせ細らせるものと産業界からも不満の声があがっている。

結論は、今回の「新防衛大綱」は日本の国防の現場-自衛隊、防衛省、「国防族」、さらには日本の防衛産業といった国内の現場の声を無視したもの、ということだ。ではいったい何のための「防衛大綱」なのか? それは米トランプ政権の強要する「自衛隊の攻撃能力保有」を「忖度」する安倍首相主導によるものということで明々白々だ。前回、書いたように「自衛隊が売られる」、すなわち自衛隊の「日米安保軍」化、日米共同の戦争に対処できる「米軍の攻撃力の一翼を担う」軍隊として、いわば米国のために戦争をするよう「自衛隊が売られる」のだ。

これは決して朝鮮にいるから大げさに言っているのではない。「現場を無視したもの」というのは、マスコミ報道で一般に言われていることだ、私はただそれが「何でなのか?」を言いたいだけだ。