金日成広場がウッドストックに!?

若林盛亮

大晦日の夜、金日成広場がウッドストックに!?

お正月放映の朝鮮中央放送のTV画面を見て、私は目を疑った。朝鮮でこんなステージは見たことがないからだ。なぜかあの“ウッドストック”-ベトナム戦争渦中の1969年8月、「愛と平和」を叫び全米から30万の若者が集まった史上初にして最大の野外ロックコンサートを私に想起させた。

広場中央に鉄骨で組み立てられたロック・コンサート会場のようなライブ・ステージ、あちこちの大型液晶パネルの舞台映像、ステージと観衆を煌々と照らす無数の照明、ステージ前、横から吹き出す火柱、演奏ごとに「ワオーッ」とわき上がる歓声、無数の長いペンライト様のものが揺れる、曲に合わせてジャンプする子供等々・・・

午前0:00を報せる除夜の鐘と同時に上がる無数の打ち上げ花火、ドローンが夜空に描く「新年祝賀」の光りの文字、ライブは第二部へと続く・・・。

ステージにはこの国超一流の芸術人たち、これが無料で見られるのだから広場は立錐の余地なく老若男女、いや老人にはちょっと無理かも、子供連れの家族総出や若いカップルたち、少なく見ても数万、もしかすれば10万以上? なにしろ軍事パレードができる広大な広場がびっしり埋まれば、それくらいは入ったはずだ。

私が驚いたのは舞台と一体となった10万余の観衆の熱気ぶりだ。

大晦日の夜はおそらくマイナス10度くらい、だからステージのミュージシャンはみな厚手のコート、防寒帽姿、観客も防寒着、でも10万余の観衆の熱気で数度は温度が上昇しているはずだ。

半世紀前のロック・フェスティバル“ウッドストック”は今や伝説だが、あれは夏のステージ、マイナス10度の野外ライブなんて史上初の試み? でも熱気ではウッドストックに負けちゃいないと思う。ウッドストックは若い男女ヒッピーの反戦平和の祭典、だとすればピョンヤン大晦日夜の氷点下10度の野外ライブはさしずめ「東北アジアの地殻変動起こすマグマの祭典」!

朝鮮に来て約50年、時代は変わる,世界は変えられる! そんな朝鮮のピープルズ・パワーを感じさせるライブだった。ほんとに、びっくりした。