歴史を正す

赤木志郎

文在寅大統領が「歴史を正す」と述べ、歴史の再評価がすすめられている。その代表例が、3・1独立運動でデモの先頭に立ち犠牲になった柳寛順(ユ・グァンスン)烈士にたいし、韓国政府が三・一運動100周年を迎えて独立有功者の叙勲等級を上方修正する方向で検討していることだ。

3・1独立運動は1919年(大正8年)、1910年の日韓併合後、起きた全国的規模の独立運動だった。それは、中国の5・4運動、日本の米騒動と同じ年であり、ロシア革命(1917年)の影響のもとでの民衆の進出とも連関し、各国で労働運動の高揚、共産主義運動の開始の契機となった。3・1運動は「独立万歳」を叫ぶ運動で、全国で圧倒的多数の民衆が立ち上がったので、日本帝国主義の植民地支配を根元から揺るがした。これを抑えるために日本の官憲は銃剣で容赦なく蹂躙していった。犠牲者の数ははかりしれない。デモの隊列の先頭にたった柳寛順はまだ16歳の梨花学堂女子学生であった。柳寛順は監獄の中で拷問により短い生涯を終えたが、その名は朝鮮の人々の心深く刻み込まれた。すでに国の独立に貢献したと叙勲を受けているが、今回、さらに高い勲章を授与するというものだ。

他にさまざまな独立運動家を発掘し顕彰することもおこなわれている。国の独立のために貢献した人々をもう一度再評価するというものだ。

一方、済州島蜂起にたいする弾圧による犠牲者にたいする国家による謝罪がおこなわれた。

まさに歴史が正されているのだ。民衆の正義の闘いが再評価され、民衆を弾圧した古い政治が否定されていっている。この歴史の見直しは、「ろうそく革命」を受け継いだ民衆の闘いの前進の結果でもあると思う。

最近、日本における反韓感情が高まっていると聞く。元徴用工賠償判決問題、従軍慰安婦問題、レーダー照射問題などで、「なんで?」という「世論」だ。しかし、元徴用工賠償問題においても、もとは日本が日韓併合を合法とし、植民地支配の謝罪と賠償をしていないところに根本問題がある。これまで親米独裁政権の朴政権との日韓基本条約、日韓経済協力協定を国と国との約束だとしても、植民地支配の謝罪と賠償問題が残るようになる。従軍慰安婦癒し基金の解散問題も本人にたいする謝罪がなく、金ですませようとしたところに原因がある。

だから、現在の日韓関係の悪化は、日本政府がもっと真摯に植民地支配の反省と謝罪、賠償を誠心誠意をこめておこなっていかなければならないということを示しているのではないだろうか。

植民地支配をあいまいにした日韓条約と日韓経済協力協定を改め、謝罪と反省を真摯にやれば、「いつまで謝罪すればいいのか」という問題も解決されると思う。