米軍基地負担費をさらに上積みという

赤木志郎

アメリカは、世界各国にたいし米軍駐留費支援費用を「駐留費用+50%」という方程式で交渉していくという。日本の場合、すでに米軍駐留費の70%以上を負担しており、それを大幅に超えて現在の約2倍とするという。現在、2016年度―20年度の5年間で前期実績を133億円も上回る総額9465億円を負担している。その倍ならつぎの5年間で1兆800億円も負担することになる。

この報道にたいし、12日岩屋防衛大臣は「日米同盟の抑止力、対処力を維持強化していくという観点から、今後とも我が国が主体的に判断し、適切に提供していきたいと考えております」と答えた。「主体的」というのは、対米従属の立場から「アメリカファースト覇権を支えていくこと」であって、日本の防衛問題を独自の戦略をもって考え、国と国民の利益の立場から在日米軍基地に対応するという意味での「主体的」ではないというのは明らかだ。

トランプが主張しているのはアメリカが各国を防衛しているからそれぞれの国が駐留費を負担すべきだと述べている。しかし、在日米軍基地は日本の防衛のためではなく、アメリカの世界各国にたいする覇権のためにある。

アメリカは1951年の朝鮮戦争のさなか、日本独立(サンフランシスコ講和条約)に際し、日本側に在日米軍基地を置くことを主な内容の日米安保条約を結ばせた。単なる米軍占領体制の延長だけでなく、朝鮮、中国、ソ連などアジア諸国にたいする侵略戦争基地としての位置づけがあった。

現在でも横須賀基地に司令部をおく第七艦隊はマラッカ海峡をふくむ太平洋地域をカバーする前方展開戦略の要となっている。沖縄に司令部と主力部隊をおく海兵隊は、アジア地域の有事に展開することを任務としている。海兵隊が航空部隊をおく岩国基地にはステルス戦闘機が配備され、海軍空母艦載機50機の移転など嘉手納基地を上回る航空部隊の一大拠点となっている。佐世保基地は強襲揚陸艦の母港であり、それはアジア有事の際に沖縄海兵隊員最大1800人を乗せて上陸作戦を支援するのが任務だ。このように、在日米軍基地はアジア太平洋地域の米覇権を保証する前進基地、司令部、通信後方修理基地、訓練基地となっている世界最大の在外基地である。

そのような米軍基地が日本にとって必要なはずがない。とりわけ、今日、米韓軍事演習が中止され朝米関係が平和と友好になれば、日本の東北アジアの平和が保証され、いっそう在日米軍基地は不要になる。

だから日本への米軍駐留はアメリカの覇権のための駐留であり、そのためになぜ日本が負担しなければならないのか。アメリカの横暴ともいうべきだろう。

トランプ政権の狙いは、戦後最大の軍事予算をたてて宇宙軍などに力をいれ、海外駐留費軽減と同盟軍自身による強化をつうじて、アメリカ第一の新たな覇権を構築するところにある。とくに、自衛隊にたいしては米軍との一体化をおしすすめている。

一方で、日本には米軍駐在を望んでいる人々がいる。それは、日本の支配層が日本の防衛のためにではなく、アメリカの覇権の陰で生きようとしていからではないだろうか。第二回米朝首脳会談で合意をみることができなかったことに一番、歓迎したのは、日本政府だった。安倍政権は、これまでどおりアメリカは朝鮮敵視をつづけ覇権をおこなってほしいからだ。

そんな安倍政権は喜んで米軍駐留費にのしをつけて差し出すだろう。国民の血税を米軍に献上することなどなんとも思っていない。絶対に許すことはできない。そのためにも、安保条約を検討し、日本の防衛自体を考えていくべきだと思う。