Spring has come!朝鮮ツツジの蕾膨らむ季節

若林盛亮

3月下旬の日本人村、山道を歩くとまだ小さく堅い蕾をつけ始めたツツジの群れを見ることができる。

Spring has come! 春はすぐそこまでやってきた。

朝鮮ツツジは春一番を告げる花、まだ冬枯れの木々で茶褐色トーンの野山にそのピンクの花びらがいっせいに咲くと春は一気にやってくる。冬の長い朝鮮で、モノトーンの景色が一挙にカラフルなピンクに染まる野山を見るのは実に壮観、やや肌寒くても「いよいよ春やなあ」と感覚させてくれる。

朝鮮ツツジは日本のツツジとかなり違う。葉の緑の中に大柄の花がある日本のツツジとは異なり、葉をつけない枝先に小ぶりな花が咲く。ひょろりと縦に伸びたいくつもの枝先毎に蕾をつけ、一気いっせいに花咲き、辺りをピンク一色に染め上げる。一つ一つの花は小さく純朴、これまたいとおかし、とても風流。

3月下旬の蕾はまだ堅く小さい、まるで中学生の少女のようだ。花咲く夢に胸ふくらませ少女たちはキャピキャピなように、冷たい風に揺れながらデビューの時をいまかいまかとゆらゆら待っている。

早くデビューさせて上げようと一枝を手折って温かい部屋に4、5日置いておくと枝先に可愛らしいピンクの花をつける。花が小さいのは蕾が堅いから、でも可憐なピンクの花は殺風景な部屋に一足早い春を持ち込んでくれる。

日本ではもう桜の便りの季節、あと10日もすればここピョンヤン郊外、日本人村にも朝鮮ツツジのピンク一色と共に春がやってくる。

なかなか思い通りには行かない人間世界とは違って、自然界の春はいつもと変わりなくやってくる。そんな朝鮮ツツジは、悪戦苦闘する人間たちに「冬の後には春が来るんだよ」と声かけしてくれる。

私は朝鮮ツツジが大好きだ。(3月28日に記す)