最後のあがき、制裁

赤木志郎

アメリカは朝鮮にたいする制裁を続けると言いながら、国境警備艇やフランス、イギリス海軍まで動員していわゆる海上での「瀬取り」を警戒している。日本も監視を強める一方、独自制裁を延長することを決定した。その理由は、「制裁が交渉での武器だから」という。いわば他国を屈服させる手段として「制裁」がある。

今日、アフガン戦争、イラク戦争のような軍事的な脅威、武力介入など力による露骨な覇権はもはや完全に通用しなくなった。アメリカの軍事力が弱化し、他方、覇権の対象となっる他の国々が米軍に対抗できる軍事力を備えてきているからだ。代わって他国に圧力をかける手段として「経済制裁」が乱発されるようになったと思う。アメリカはキューバ、イラン、ロシアなどに様々な口実で制裁を実施している。その最たるものが朝鮮にたいする石油、鉱物、労働力などの輸出入の大幅な制限だ。軍事力では効かないので、経済的に窒息させようというものだ。ドル決済をさせない金融制裁や企業にたいする制裁、個人資産の凍結なども含まれる。

しかし、それもすでに破綻したことが証明されたのではないか。90年代の「苦難の行軍時期」に朝鮮は資本主義の包囲にたいし社会主義を守り、自力更生で自立的経済を立て直すことに成功していった。

今日の朝鮮にたいする制裁はかつてないものだが、以前よりも自力で発展させるだけの力を幾倍もの強めており、しかも、中ロをはじめ世界の多くの国々が朝鮮にたいする制裁に反対している。にもかかわらず、なぜアメリカはそんな方法にしがみつき、安倍政権が追随するのだろうか。

朝鮮が発展し南北の統一が進むのが厭だから、少しでも足を引っ張りたいからなのか。

そうすればそうするほど、今回の国務委員長の施政演説にあったように朝鮮は自力更生のスローガンをかかげ、科学技術の力でさらに自立的経済を強化するだけであって、アメリカや日本の「制裁」が意味をなさなくなる。

私は「制裁」は覇権の最後の手段だと思う。軍事力での侵略だけでなく、経済制裁も破綻を免れることができない。なぜなら、軍事や経済などの力による他国にたいする支配(覇権)は不正義であり、かならず各国人民の反撃を招くからだ。となれば、覇権自体がいっさい通じない。覇権の時代の終わりを、アメリカの経済制裁が通じなくなることが証明していくのではないかと思う。