和の理念を掲げてアジアと向き合おう

魚本公博

4月20日の朝日新聞に、新元号「令和」の考案者の一人とされる、中西進(国際日本文化研究センター根伊与教授、29年生まれ)へのインタビュー記事があった。その中に「アジアの中、自分を失わず、和の理想掲げて」という項目があり、そこでは記者の「日本が孤立や独善に陥らないために何が必要でしょうか?」という問いに対して中西さんが次ぎのように答えていた。

「それこそ『和』でしょう。そして和の対極にあるのが他国への越境でしょう。日本には朝鮮半島などに武力で押し入ってしまった歴史があります。そういう近代のひどい歴史はもう終わりにすべきです」と。

中西さんは、「戦争体験者」として、「平和」を重視し、その対極であった軍国主義、侵略、戦争を否定する。しかし、今の日本の動きはどうなっているか。米国に従って戦争する国に。その相手は中国や朝鮮半島。中西さんの、「もう、そんなひどい歴史は終わりにすべきです」という言葉には、そうした動きへの危惧、そうなってはならないという強い意志を見てとれる。

「和」は聖徳太子の17条の憲法に代表されるように、漢字文化圏の中で徳目とされた仁や徳よりも上位に置かれてきた日本に特徴的、独自的な理念。米国に従ってアジアに敵対するという動きが強まっている中にあって、「和」をもってアジアに対するというのは極めて適切なものだと思う。

私自身は元号については否定的に捉えている。しかし、国民の多くが、それを受け入れている現状の中で、そこに国民の願い、要求をどう反映させ付与していくのか、それが大事なのだと思う。いよいよ令和の時代が始まる。東アジアが米国覇権秩序に反対し「平和と繁栄」の新しい東アジアへの志向を強めている中、日本が「和」をもって、これに対することが切実に問われている。