海苔

赤木志郎

最近、朝鮮で「食料品革命」が起こりさまざまな便利な食料品が売り出されるようになり、そのなかに海苔の佃煮(生姜味、ニンニク味、こしょう味の3種)や海苔のふりかけがあった。さっそく買って味わってみた。海苔は国が違っても海苔の味がする。ご飯を食べるときいつも海苔をそなえ、日本の味として噛みしめることができるようになり、私としてこんな嬉しいことはない。

私は海の近くで育ったせいか、海苔が好きだ。好きというのは、美味しいというより海苔に郷愁を覚えるからだと思う。海苔の佃煮、海苔のはいったふりかけ、海苔そのもの。日本から訪朝団の方で海苔をもってくる人が多い。古い日本旅館では朝食に必ず海苔がそなえられる。海苔養殖は各地でさかんにおこなわれ、日本の食卓に欠かせないものとなっている。朝鮮の人には赤い唐辛子が必ず料理に入っていなければならないように、日本人には海苔があるとなんとなく安心するのではと思う。

日本民族と海はきってもきりはなせないといえる。海に囲まれ海の幸に恵まれてきた。浜辺にゆくと磯の香りがするのに懐かしさを感じる。私は朝鮮で海岸地帯に行くと、塩の香りや磯の香りに触れ、日本を思い出す。海苔は海を思い出す象徴だ。

さらにこういう話もある。淡路島の近くにある沼島には、海人(あま)族が到来していざなぎがいざなみと共に日本を産んだという古い伝説が伝わっている。そのためその話が古事記に取り入れられているそうだ。海と日本民族がきりはなせないといえる。私が海苔に郷愁を覚えるのは、この辺に源流があるかも知れない。