縄文ブーム、「いいね」!

魚本公博

「縄文 若者もハマる」(朝日新聞4月9日の耕論欄)。今、何回目かの縄文ブームなのだそうです。今回の特徴は「土偶女子」という言葉が生まれたように若い世代にも広がっていることだとか。

その女子の見方として、タレントの藤田みなみさんが「暮らしを愛する心」なのではないかと感想を述べていました。土偶展では「カワイイ」という声が飛び交うとか。

戦前、縄文は無視・否定されてきました。考古学の発掘調査でも弥生式土器層の下に遺物があると発掘責任者が、「そこまで」と発掘を中止させたと言います。戦前の皇国史観では、日本は、神武天皇以来の「天孫族」なのであり、それ以前の歴史は認められないものだったからです。

戦後の縄文ブームは、こうした皇国史観に囚われることなく「日本人とは何か」を人々が求めたことが背景にあると思います。

考古学者の藤田貴之さんが今回のブームについて、「解釈の巾、左派も右派も」と題して意見を述べていましたが、今の縄文ブームは、左とか右とかに関係なく、日本のアイデンティティとは何かを探求するものになっているのではないでしょうか。そして「暮らしを愛する心」など、生活者の目線からの捉え方など、なかなか良いものを持っています。

藤田さんは、考古学はナショナリズムと結びつきやすいと言っていますが、戦前の皇国史観のような偏狭で排外主義的なナショナリズムではなく、生活者目線からの日本のアイデンティティの追求が「縄文ブーム」の背景にあるとすれば、「縄文ブーム、いいね!」と思うのです。