天皇を盾に戦争責任をそらすな

赤木志郎

今年2月に文喜相(ムン・ヒサン)韓国国会議長は「日王(天皇のこと)が元慰安婦に直接、謝罪をすればすべて解決する」と述べ、日本政府の撤回と謝罪要求にたいしまったく受けつけなかった。とりわけ河野外相の抗議にたいしては、「謝罪する側が謝罪せず、私に謝罪しろとは何事か。盗人たけだけしい」と語った。

それから4ヶ月経って、訪韓した鳩山元首相との談話の席で文国会議長は、「(その発言で)不快な想いをされた方々に申し訳ない」と謝罪した。これにたいし、さまざまな人が文議長を声高に非難している。

戦争当時、日本軍は天皇陛下万歳と言いながら、アジア諸国を侵略し、天皇を崇める神社をソウル、シンガポールなど占領地に作り、天皇崇拝思想を植え付けていった。それゆえ、韓国の人たちや文国会議長が天皇の謝罪を求めるというは一概に否定できない。しかし、文国会議長や韓国の人たちの真意は、日本政府が植民地支配にたいする反省と謝罪をちゃんとやっているのかということだと思う。

文国会議長が鳩山元首相に謝罪の意を伝えたのも、鳩山元首相が「人々が納得するまで謝罪する」という姿勢を示している人だからだ。日本政府の反省と謝罪を求めることを取り下げたのではない。

日本政府の天皇に対する謝罪要求はけしからんというのは、軍国主義勢力の責任のすりかえだといえる。いわば天皇を盾にして戦争責任をそらしている。

韓国が「反日」になっていると嫌韓感情が高まっているといわれるが、その根は日本政府が植民地支配の反省と謝罪を真におこなっていないところにあると思う。