-「いずも」型護衛艦「空母化」への疑問の根本にあるもの-「米国中心の覇権的権益を守る」防衛なのか、「日本の国土を守る」防衛なのか!

若林盛亮

5月のトランプ訪日時に日米首脳が横須賀を訪れ、空母化改修が予定される「いずも」型護衛艦上での演説で、両首脳が空母化を絶賛したことに元海上自衛艦隊司令官・香田洋二海将が反対論を述べたことを前回、書いた。

香田氏の反論の主旨は「国防に大きな穴が空く」悪結果をもたらすというものだ。

「いずも」型護衛艦は、海上交通路確保のために搭載した14機の対潜水艦ヘリコプターによる索敵と撃破という対潜水艦作戦任務のために運用されているものだ。

日本の海上自衛において対潜水艦用に「いずも」型の護衛艦、「いずも」と「かが」の二隻の護衛艦体制をとって海上交通路の安全確保体制をとっている。各護衛艦が「敵」潜水艦4隻を担当できる能力を備えるという想定の下に日本の海上交通路の安全を保つという綿密な国防計画に基づくものだ。だから「いずも」型を空母化して対潜ヘリではなく対空戦闘機(短距離離陸・垂直着陸F35B)を搭載して対空任務に転用するならば、たちまち日本の対潜水艦防衛という国防体制に「大穴」を空けるものとなる。

香田海将の言う「国防に大穴を空け」てまで、「いずも」型護衛艦の空母化でいったい、何を守るというのか?

安倍とトランプが「いずも」型護衛艦の「空母化」を絶賛したのは、それが「インド太平洋地域の平和と安定に寄与する」という一点に尽きる。「国防に大穴を空け」てでも「インド太平洋地域の平和と安定」を守ることが大切だということだ。

トランプが言う「インド太平洋地域の平和と安定を守る」とは、拡大一途を続ける中国の「一帯一路」に対抗してこの地域一帯の米国中心の覇権的権益を守っていくということを意味している。こうした条件下でわが国が「インド太平洋地域の平和と安定に寄与する」意思を明らかにするということは、正確に言えば、わが国が米国中心の国際覇権秩序の下で自己の海外権益を確保する道を変わらず追求していくという意味だ。

「インド太平洋地域の平和と安定に寄与する」目的の「いずも」型護衛艦「空母化」は、現在の日本の防衛が日本の「国土を守る」防衛ではなく、「米国中心の覇権的権益を守る」防衛であることを図らずも露呈した。

国土防衛を犠牲にしてまでも推進される「いずも」型護衛艦の「空母化」に対する疑問は、日本の防衛が「米国中心の覇権的権益を守る」防衛なのか、「日本の国土を守る」防衛なのか、この根本問題の論議へと進められていくべきだと思う。