【今月の視点】「米中新冷戦」をどう見、それにどう対するか

小西隆裕

この間の米国による中国・通信大手、ファーウェイに対する制裁や「米中貿易戦争」は、米中間の単純な経済上の摩擦、確執ではないと思う。

去る5月末、スイスのビルダーバーグに欧州の「超エリート」を集めて開かれた「完全オフレコ会議」、そこで米国のポンペオ国務長官、クリシュナー大統領特別補佐官は、「米中百年冷戦」の開始を宣言し、それに対する了解を求めたと言う。

その意味するところは簡単でないと思う。トランプの大統領就任以来推し進められてきた米覇権のあり方の転換、グローバリズムによる覇権から「ファースト主義」による覇権への転換を正式に通告する会議だったと言えるのではないか。

実際、ファーウェイへの制裁は、単なる一企業に対する制裁ではなく、デジタル覇権をめぐる米中の国を挙げての覇権戦争に他ならず、「貿易戦争」は米中の興亡をかけた伸るか反るかの覇権抗争に他ならない。

さらに、米国による覇権攻勢は、対中国に止まらない。その経済制裁は、朝鮮、ベネズエラ、イラン、等々、世界各国に及んでおり。それは、経済の域を超え、政権転覆策動、戦争の脅しにまで至っている。

一方、欧州に台頭する「EU懐疑派」、自国第一主義勢力の「右派」とトランプ政権との連携がこの間一段と強められている。トランプの「政治思想顧問」、バノンがこの間、欧州を中心に世界的範囲で動き回っているのは公然の秘密だ。

これらは、明らかに、一つ一つバラバラの動きではない。新たな米覇権、「ファースト覇権」確立に向けた一つの統一された動きと見るべきではないだろうか。

この米国による新たな覇権をどう見、それにどう対するか。それは、今、世界のすべての国と国民の前に切実に問われていることではないかと思う。

もともと、「ファースト」、自国第一主義は、国と民族を否定するグローバリズムによる覇権に反対して生まれてきたものだ。

トランプ自身、「アメリカ・ファースト」を掲げながら、覇権のために自国をないがしろにするのに反対し、「世界の警察」にはならないと公約していたではないか。

その「ファースト」を掲げての覇権は、それ自体、完全な自己矛盾であり、弱肉強食、「強い米国」、むき出しの力による支配以外の何ものでもない。

「米中百年冷戦」が宣言され、「強い米国」による覇権が強行されてくる中、それに屈従する安倍政権の下、日本はその一部として軍事も経済も組み込まれ、この矛盾に満ちた覇権を支えるため動員されていっている。護衛艦「いずも」と「かが」の空母化とF35Bの搭載や種子法、水道法の改正とコンセッション方式による運営権の米系外資への譲渡などはその象徴だと言えるだろう。

この日本の命運を分けるかつてなく深刻な事態にあって、安倍政権に国の進路を委ねておくことはできない。

時あたかも、参院選をめぐりながら政権交代の機運が一気に高まってきている中にあって、その機運を野党に任せておくのではなく、国民の側から主導し促進していくことが求められているのではないだろうか。