「ゼニ・カネ」を突破口に「新しい政治」の模索を

魚本公博

今、「なぜリベラルは負け続けるのか」((集英社インターナショナル発行)という本が注目されているらしい。

私はまだ読んでない(残念ながら、すぐには読めない)が、ネット配信のBULOGOSのインタビュー記事を見ることができた。その題目は「安倍政権の倒し方を少し大人になって考えよう」というもの。

著者は、専修大学法学部教授で政治学者の岡田憲治氏。リベラルを自認する氏は「いかにして安倍政権を倒すか」という目的をもって問題提起する。具体的には、「35の1人区で25勝7敗くらいにもって行けば結果は大きく変わる」のであり、そのために、4割を越える「支持政党なし」の7~8%が投票(野党に)するようにする。すなわち、彼らの心を、そのように動かすには、どうすべきかということである。

そこで岡田氏が強調するのは、「ゼニカネ=生活」の話しをしろということである。これまで、リベラル(野党)は、「正しいことを言って分かってくれたら、それでいい」という姿勢で「正しい」(改憲反対、原発廃止、安倍政権批判などなど)話しをするだけ。それでは底辺に押しやられ、政治よりも何よりも、明日の暮らしをどうするかと考えているような人たち(「支持政党なし」)の心を動かすことはできないと。このことを氏は「この先、暮らしに希望をもてない28歳の気持ちを想像しろって思います」と実感を込めて言う。

それは、決して「支持政党なし」の人たちだけの問題ではない。岡田氏が言うように「(今や)国民最大の関心はやせ細った生活」なのであり、この国民に「ゼニ・カネ」の話しをしろということだと思う。

岡田氏は、これまで各種選挙にも関与してきて、こうした思いを痛切に抱いたようだ。「俺がダメだった」。自身の「いたらなさ」を自戒し、そこから思索を深めての問題提起だけに説得力があるし、その姿勢と見解は正しいと思う。実際、今話題の「れいわ新選組」の山本太郎さんの演説会では「消費税(ゼロを主張)を話し出すと聴衆の注目度は一気に増す」らしい。岡田氏もそれを評価して、「山本太郎は『本物の好景気ってもの見せてやる』って言ってる。(聴衆は)『えっ?』と腰を抜かす、そういうことなんじゃないの」と。

「ゼニ・カネ」を突破口に、様々な考え方が提起され議論されるのは良いことだ。

山本太郎さんの場合でも、単に消費税という「ゼニ・カネ」の問題だけでなく、「消費税廃止が、野党とこの国に残された唯一の活路である」とか「日本独立」など、日本という国全体のことを考え、そこから発信される「ゼニ・カネ」=消費税だからこそ人々を引きつけるのではないかと思う。岡田氏は、リベラルに固執するが、それでよいのかも考えるべきことだろうし・・・。

いずれにしても、人々の生活感覚に寄り添い、その心に合うように、政治を考え、国のあり方を考えていく。それが「新しい政治」を生み出していくと思う。今回の参院選で、こうした議論と模索が強まることを期待する。

私自身、「正しいことを言えば、それでよい」という姿勢がなかったか。「俺がダメだった」、そうした自戒をもって、これからの政治推移を見ていきたいと思う。