混乱の極まり、日本外交

赤木志郎

現在、安倍首相の得意分野だったはずの外交が、混乱の極みに達していると思う。

まず、ロシアとの領土問題では、第二次大戦敗戦の結果、ロシア領土になったということを認識せよ、そのうえで日米安保条約がある以上、米軍基地が建設されうるので二島返還はありえないと通告されている。日本はあわてて公式文書から「北方領土」という言葉を削除し、極東開発の経済協力に応じるだけで、「北方領土問題の解決」は霧散してしまった。

韓国との関係では、先日、半導体の原料など3品目の輸出規制についての日韓実務者会談が行われた。それは交渉の場ではなく、日本側にとっては輸出規制措置の説明の場だった。日本側は元徴用工問題の報復のためではなく、国内の法律に従っての輸出規制のだから交渉する問題ではないという。しかし、日本が世界の90-70%を占める材料を韓国企業が得ることができなければ主力製品である半導体を生産できなくなるというのは、分かっているはずだ。日本政府は、第2、第3の報復措置を準備しているという。入国ビザ制限や、輸出規制を工作機械など他品目に拡大していくものだという。日韓関係は悪化の道のみ進んでいる。日米韓同盟はすでに過去の話しだ。

中国との関係は一見、改善しているように見えるが、米中の貿易戦争の間に挟まれ、身動きとれないのが実相だ。対中関係をほんとうに改善していくのか、形だけのものにするのか、日本政府は問われている。

朝鮮にたいし安倍首相は「無条件の首脳会談」を提案しているが、植民地支配の反省と謝罪、賠償と国交正常化を求める朝鮮側に相手にされず、依然として東北アジア外交から蚊帳の外に置かれている。トランプ大統領から日朝関係の改善と経済支援をするように言われても何もできないでいる。

極めつけは、対米関係だ。G20大阪会議ではアメリカにより何も決めることができず、イランとの交渉仲介を言い渡された上、その失敗の上でイランにたいする軍事的圧力と経済制裁に日本が加わるようにされ、日米安保条約の廃棄まで言及されている。そのうえ、8月には日米貿易交渉があるが、日本政府がアメリカの言うなりになるのは明らかだ。

日本外交が行き詰まるだけ行き詰まり、無為無策に陥っている原因は、独自性のない対米追随ぶりにあり、そのため時代の流れを自分の頭で感じ取ることができずにいるからだ。今やかつて戦後世界がアメリカが「世界の憲兵」としてその覇権のもとにあった時代ではない。自国第一主義が時代的な潮流となっている現在、対米追随だけではアメリカファーストに日本が食いつぶされ利用されるだけであり、アジア、世界各国との日本外交をすすめることができない。

今こそ、日本の利益、国民の利益を第一とし、他国の覇権に荷担せず自国の覇権を求めず平和と友好を追求していく自主平和親善外交を確立していくことだと思う。