小西隆裕
日本政界に衝撃が走った。と言うより、多くの政界人が呆然となった。と言う方が実相に近いのかも知れない。
トランプ米大統領が発した「日米安保破棄」は、直ちに「破棄」ならぬ「改訂」に訂正されたが、これに対する安倍政権、日本政界の反応が実に鈍い。
今たけなわの参院選でも、まったくと言っていいほど取り上げられていない。与野党ともにこれにどう対したらよいか、立場、態度の表明をしかねているのではないか。
実際、これは、トランプの気まぐれなどと言った、生やさしいものではない。
米覇権戦略の転換に基づいた対日政策の転換に他ならない。
トランプ発言に続いて出された米統合参謀本部議長ダンフォードによる「(イラン攻撃のための)有志連合への日本参加要請」は、端的にそれを物語っていると思う。
トランプの言う「自分の国は自分で守れ」は、すなわち、「米軍の指揮の下、米国とともに戦争できる国になれ」を意味しているということだ。
今日、米覇権戦略は、トランプ大統領の誕生にともないながら、グローバリズムから「ファースト主義」へ大きく転換している。
「アメリカ・ファースト」、「強い米国」による世界支配。世界の「ファースト化」を是認・提唱しながら、その上に力による君臨を図り・強行する米ファースト覇権。
「米中新冷戦」、イラン攻撃、南米、欧州、アジアなど世界中の内部紛争・抗争の焚き付けと扇動、等々、今、全面化する米覇権戦略の転換にあって、日本の軍事、経済力の「ファースト化」とその米覇権力の一部としての組み込み、取り込みは、必須の要求になっている。
米覇権戦略と対日政策の転換、そこで忘れてはならないことがある。東北アジアで今進行中の時代的転換だ。ネオコンによる敵対と戦争から平和と繁栄へ、東北アジアで生まれているこの朝鮮戦争以来の冷戦構造を突き崩す地殻変動、時代的転換は、グローバリズム・新自由主義・新保守主義から「ファースト主義」へ、米覇権戦略転換の重要な一環を意味している。
この南北朝鮮人民の切実な要求と米覇権戦略転換の要求、そして中ロ両大国の覇権的要求が絡まり合った歴史の新時代にあって、日本の取るべき道は如何に。
戦後・対米従属70余年、維新・脱亜入欧140余年、この間、このように根本的な時代的転換の時があっただろうか。
懸案の日朝関係、日韓関係まで含め、すべての関係とそのあり方が変わる、歴史的転換の時にあって、今こそ、日本の命運を決する一大決断がわれわれ一人ひとりの前に提起されてきているのではないだろうか。